「クレアチンは運動後がいい」「プロテインは30分以内に」。ジムのロッカーで交わされる助言は、たいてい飲む中身より「タイミング」の話だ。では、その時間指定に研究の裏づけはどれだけあるのか。順位にしてみる。

採点基準を先に開示する
採点するのは「そのタイミング指定に、直接の研究の裏づけがどれだけあるか」だけだ。
体感・売れ筋・宣伝文句・理屈の美しさは採点しない。軸は研究の本数とデザイン(メタ分析/ポジションスタンド/レビュー)、そして「タイミングそのものを比べた研究があるか」。「最強」や「Tier」はエンタメの言葉で、順位は効果の保証ではない。効果には個人差があります。
S: カフェインの「運動の約60分前」に根拠はある?
ある。タイミング指定にいちばん研究がついているのはカフェインだ。
Guest et al. 2021(ISSNポジションスタンド)は、カフェインが体重1kgあたり3〜6mgで運動成績に有効で、摂取タイミングは運動の60分前が最も一般的と報告している。反応の個人差は遺伝的な代謝や習慣的な摂取量に由来しうるとも述べる。「いつ飲むか」に土台がある数少ない成分だ。
A: たんぱく質は「運動直後のゴールデンタイム」?
否定されたわけではないが、過大評価されてきた。主役は1日の総量だ。
Schoenfeld, Aragon & Krieger 2013(メタ分析・筋肥大23研究)は、1日の総タンパク質量を統計的にそろえると、運動前後のタイミングによる筋力・筋肥大の差は消えたと報告している。Morton et al. 2018(49RCTのメタ分析)も、効くのは総摂取量だと示した。Aragon & Schoenfeld 2013は「同化ウィンドウ」の重要性は条件しだいで、従来説は誇張されてきたと論じる。「時間帯に意味がない」と反証されたのではなく、「総量ほど効かない」というのが今の読み方だ。
B: クレアチンは「いつ」で差がつく?
いまの証拠では、タイミングより総量と継続が土台になる。
Kreider et al. 2017(ISSNポジションスタンド)は、クレアチン一水和物を高強度運動の成績とトレーニング適応を高める最も効果的な補助手段の一つと位置づけ、健常者で長期に使っても安全性が高いと報告している。一方で「運動前と運動後どちらが上か」をきれいに決着させた研究は、今回照合した範囲では限定的だった。これは「タイミングはどうでもいいと反証された」のではなく、差を主張できる直接の証拠がまだ薄い、ということだ。Bに置いたのは成分の価値が低いからではない。この基準——時間指定の根拠の厚み——では上がらない、という意味にすぎない。
判定: あなたが何を整えたいかで変わる
- 運動のキレを一段上げたいなら——カフェインを運動の約60分前に。時間指定の根拠がいちばん厚い。
- 体づくりの栄養を整えたいなら——たんぱく質は毎回の時計より1日の合計を先に。
- クレアチンを使うなら——飲む時刻で消耗せず、続けやすい時間に固定するのが現実的。
順位が測っているのは研究の厚みで、あなたにとっての必要性ではない。効果には個人差があります。
今夜の一手: タイミングの優先順位を1つ書き換える
- いま気にしている「◯分以内」ルールを1つ思い出す(約10秒)
- それがカフェイン以外なら、「時刻」より「1日の合計・続けやすさ」にメモを書き換える
時計を気にするエネルギーを、続けやすさに回す。それだけで土台は整いやすくなる。

