眠れない夜が続くと、ドラッグストアの棚の前で手が止まる。「睡眠」と書かれた小瓶がいくつも並ぶ。一方で、病院で出される薬もある。同じ「眠りのためのもの」に見えて、この二つは制度上まったく別の場所に置かれている。違いは効き目の強さではなく、誰が科学的根拠を確かめたかだ。
睡眠サプリは、制度のどこに置かれているのか?
棚に並ぶものの多くは、医薬品ではなく食品に区分される。 消費者庁の解説では、食品のうち機能を表示できる保健機能食品は3種に分かれる。国が定めた定型文で栄養成分の機能を書く栄養機能食品、国が科学的根拠を個別に審査して許可する特定保健用食品、そして事業者が自らの責任で根拠を消費者庁長官に届け出る機能性表示食品だ。
さらに、この3区分のどれにも入らない、いわゆる健康食品も棚には混ざっている。同じ売り場に並んでいても、背後にある確かめ方はまったく違う。
「機能性表示食品」は、国が効果を審査しているのか?
していない。消費者庁がそう明記している。 機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠に基づく機能性を販売前に届け出る制度で、特定保健用食品と異なり国は個別の審査を行わない。だから事業者は自らの責任で適正な表示を行う必要がある、と制度側が書いている。
ここは誤解されやすい。表示があることは「国が効果を認めた」ではなく「届出があった」を意味する。ただし、これは制度の弱点というより読者の武器でもある。届け出られた情報は消費者庁のウェブサイトで公開されているからだ。買う前に、その一品が何を根拠にしているかを自分で読める。
では、どこまで期待していいのか?
根拠が比較的厚いとされる成分でも、報告されている効果は控えめだ。 睡眠サプリの成分でよく名前が挙がるメラトニンは、19研究・約1,683人のメタ分析で、入眠までの時間の短縮・総睡眠時間の増加・睡眠の質の改善と関連したと報告されている。ただし原著はその効果を中程度(modest)と表現している。
つまり、期待の置き所は「これで眠れるようになる」ではなく「リズムのずれを穏やかに後押しするかもしれない」あたりになる。効果には個人差があります。
薬の側については、ここでは判定しない
医薬品の効果や適応は、医師や薬剤師が個人の状態を見て判断する領域だ。この記事はそこに踏み込まない。眠れない状態が続いているなら、市販のものを重ねていく前に医療機関へ相談するほうが早い。持病や服薬がある場合も、自己判断で何かを足さないでほしい。
今夜の一手: 手元の一品が、どの区分か確かめる
家にある、あるいは買おうとしている一品のラベルを見る。栄養機能食品・特定保健用食品・機能性表示食品のどれかが書いてあるか、それとも何も書かれていないか。それだけで、その一品の背後で誰が何を確かめたのかが分かる。判断はそのあとでいい。

