ドラッグストアの睡眠サポート棚は年々長くなる。メラトニン、マグネシウム、テアニン。どれも「眠りの質に」と書いてある。この記事は何も売らないので、研究の温度をそのまま書ける。結論から言うと、3成分の効果はどれも控えめで、しかも買う前に試すべき0円の一手がある。
採点基準を先に開示する
軸は研究の量と質だけ。 体感談・売れ筋・成分の理屈の美しさは採点しない。効果には個人差があることを前提に、各成分について「どれくらいの規模の研究が、どれくらいの効果を、どれくらい確かに示したか」を並べる。
3成分の現在地
メラトニン: 3つの中では最も研究が厚い。ただし効果は「中程度」。 19研究・1683人のメタ分析(Ferracioli-Oda 2013)で、入眠までの時間の短縮・総睡眠時間の増加・睡眠の質の改善と関連が報告されている。著者らの評価は modest——控えめな効果、だ。劇的な変化を約束する研究ではない。なお日本では、メラトニンは米国のようにサプリとして自由に買えるものではなく、扱いが国によって違う。海外通販の情報をそのまま当てはめないほうがいい。
マグネシウム: 「効かない」ではなく「まだ確かめられていない」。 高齢者3試験・151人のメタ分析(Mah & Pitre 2021)で入眠までの時間が約17分短縮と報告された。一方で総睡眠時間の差は統計的に有意ではなく、著者ら自身が、全試験に中〜高いバイアスリスクがあり、エビデンスの質は低〜非常に低いと明記している。反証されたのではない。確立もしていない。その中間にいる。
テアニン: 方向は良いが、規模が小さい。 30人の二重盲検クロスオーバーRCT(Hidese 2019)で、200mg/日・4週間の摂取が睡眠の質(PSQI)の改善と関連した。単発の小規模試験に近く、追試の蓄積を待つ段階だ。

買う前に: 0円の介入が先
就寝前30分のスマホ制限で、入眠と睡眠時間の改善が報告されている。 38人の予備的RCT(He 2020)では、就寝前30分だけスマホをやめる4週間で、入眠までの時間の短縮・睡眠時間の増加・気分の改善が報告された。小規模だが、費用はゼロで副作用の報告もない。夜スマホが長い自覚があるなら、サプリの棚より先に、ここが最初の一手になる。
判定: あなたはどうする?
順序で決める。 あなたが夜スマホ1時間以上なら、まず30分制限を4週間——これが最も安上がりな実験だ。それでも入眠に時間がかかるなら、研究が比較的厚いメラトニンの情報を調べる価値はある(国内での扱いは製品によって異なるため、購入前に成分表示と注意書きを確認する)。マグネシウム・テアニンは「試すのは自由だが、確立はしていない」と知った上でなら止めない。眠れない状態が長引いてつらいなら、サプリではなく専門家へ。効果には個人差がある。
今夜の一手: 棚の前ではなく、枕元を変える
今夜、充電器を枕元から机に移す。就寝前30分のスマホ制限は、意志ではなく距離で作るほうが続く。4週間後にまだ悩んでいたら、そのとき初めてサプリの棚に戻ればいい。

