夜、歯を磨いてベッドに向かう前、キッチンでプロテインを一杯。意味があるのか、それとも気休めか。トレーニングをする人なら一度は迷う問いだろう。「寝る前にとると睡眠中の回復に働く」という話には、実は専用の研究がいくつかある。断定はできない。それでも、静かな夜に読める手がかりとして整理してみたい。

寝る前のたんぱく質は、睡眠中に働くのか?

研究では、就寝前にゆっくり消化されるカゼインをとると睡眠中も消化・吸収が続き、運動後の一晩の回復が高まったと報告されている。ただしこれは小規模な研究での結果だ。

参照したのは、Res らが 2012 年に Med Sci Sports Exerc 誌へ報告した交差研究。対象は夕方に筋力トレーニングを行った健康な若い男性 16 名。就寝 30 分前に 40g のカゼインまたはプラセボをとり、標識アミノ酸で追跡した。結果、カゼインは眠っている間も消化・吸収され、血中のアミノ酸と一晩のたんぱく質バランス、筋タンパク合成がプラセボより高かった。「寝ている間は何も起きない」わけではない、という読み方ができる。

ただし 16 名という規模は小さく、「そういう報告がある」段階だ。よく引用される具体的な増加率は原著の抄録で確認しきれなかったため、ここでは数値化しない。

続けたら差は出るのか?

12週間の筋力トレーニングに就寝前のたんぱく質を足した群のほうが、足さない群より筋力や筋肉量の伸びが大きかったという報告がある。

Snijders らが 2015 年に J Nutr 誌へ報告した二重盲検の無作為化試験では、健康な若い男性 44 名が 12 週間トレーニングを行った。就寝前に 27.5g のカゼインをとる群は、非カロリーのプラセボ群よりタイプ II 線維の断面積の伸びが大きかった(+2319±368 対 +1017±353 μm²、P<0.05)。筋力の伸びも大きかった。

もっとも、これがそのまま万人に当てはまるわけではない。高齢の男性やある集団では、就寝前のたんぱく質を足しても差が出なかったという報告もある。効果はトレーニングを続けている若い男性で最もよく支持されており、誰にでも同じ結果が出ると読むのは早い。効果には個人差がある。

今夜の一手: 一日全体をまず整える

就寝前の一杯を試すなら、まず土台から。①日中のたんぱく質が不足していないかをざっくり見直す。②寝る前に足すなら、消化のゆっくりなカゼイン系を少量から。③睡眠時間そのものを削ってまで飲まない。回復の主役は眠りのほうだ。夜の一杯は効果を保証するステップではなく、続けやすければ試す小さな選択肢として捉えるのがちょうどいい。