寝る前にプロテインを一杯飲んでから眠る。「カゼインは消化がゆっくりだから、寝ている間の筋づくりに効く」とどこかで聞いた気がして、習慣にしている人は少なくない。だが「寝る前」というタイミングそのものが結果を左右するという証拠は、どこまであるのか。

寝る前のカゼインは、筋づくりを特別に後押しするのか?
寝る前カゼインが特別に効くと言い切れる強い証拠は、今回照合できた台帳の範囲では見当たらない。
DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)に基づく網羅的レビューでは、カゼインは117と評価され、卵101・豚肉117と並ぶexcellentクラスの質の高いタンパク質に区分されている。ホエイの85はhighにあたる。ただしこれは単一食品のアミノ酸の質を示す指標であり、「就寝前という一点」が筋づくりを押し上げるかどうかとは別の話だ。質が高いことと、飲むタイミングが特別に効くことは、混同しないほうがいい。効果には個人差がある。
では、筋づくりの土台になっているのは何か?
支えられているのは「寝る前」ではなく、1日を通じた総タンパク質量のほうだ。
49件のRCT・N=1863をまとめたメタ分析は、レジスタンス運動時のタンパク質補給は総摂取量が体重1kgあたり約1.62g/日を超えると、除脂肪体重の追加増加は見られなかったと報告している。効果は年齢やトレーニング経験によっても変わりうる。主役はタイミングではなく総量だ。だから軸を入れ替えたい。就寝前の一杯に賭けるより、まず1日の総タンパク質量が目安に届いているかを確認する。根拠が薄い(未確立)ことは、否定された(反証)こととは違う。寝る前カゼインを試すこと自体を止める理由にはならないが、それだけに頼らないほうが現実的だ。
今夜の一手: まず1日の総量の目安を確認する
今夜は一杯を足すより、今日食べたタンパク質の総量をざっと振り返ることから始めたい。体重1kgあたりおおよそ1.6g前後を目安に、足りていなければ食事全体で補う。寝る前のカゼインはその一部として使えばいい。持病がある場合や量を大きく変えたい場合は、自己判断せず医師や管理栄養士へ相談を。効果には個人差があります。


