夜遅く、台所の棚から取り出したフィッシュオイルのボトルを手のひらで転がす。飲んだほうがいいのか、それとも要らないのか。ラベルの小さな文字を眺めながら、答えが出ないまま蓋を閉じる。
そんな夜に一度は浮かぶのが、オメガ3を「魚から摂る」のと「サプリで摂る」のと、どちらがいいのか、という問いだと思います。この記事は優劣のランキングではなく、あなたの生活に合わせた条件分岐として整理します。
大規模RCTでは、サプリの上乗せ効果はどうだったの?
まず押さえたいのは、サプリの「追加の利益」は大規模な検証で限定的だったという事実です。 Abdelhamid 2020(Cochrane・RCT86件・162,796人・2019年2月までのエビデンス)は、長鎖オメガ3サプリの心血管疾患・総死亡への効果を統合し、全体としてほとんど、あるいは全くないと結論しました。これはサプリという「補給の上乗せ」を評価したもので、魚を食べること自体を否定するものではありません。
気分の面でも同じ傾向がありました。Okereke 2021(JAMA・VITAL-DEP・N=18,353・追跡中央値5.3年)では、うつ病・抑うつ症状の発症リスクにハザード比1.13(95%CI 1.01–1.26)で、予防の目的でのサプリ摂取は支持されなかったと報告されています。ただしこれは集団平均の話で、どう受け取るかには個人差があります。
じゃあ、あなたはどう選べばいいの?
答えは「あなたが今どんな食生活か」で分かれます。 魚をふだんそれなりに食べられているなら、無理にサプリを足す必要は薄いと考えられます。逆に、魚が苦手・調理の機会が少ない・外食続きで魚から遠い、という人にとっては、サプリが選択肢のひとつになります。
もう一つ知っておきたいのが、EPAとDHAで作用が分かれる点です。Wei & Jacobson 2011(システマティックレビュー+メタ分析)は、EPAもDHAも中性脂肪を下げ、直接比較ではDHAの下げ幅がやや大きい一方、DHAはHDL・LDLをわずかに上げるなど、血中脂質への作用が分かれると報告しています。つまり「オメガ3」とひとくくりにできない部分もあります。
大事なのは、これらのレビューは魚を食べること自体を否定していない、ということです。まず食事全体で魚から摂るのを土台にする。その上で足りなさを感じる人が補いを考える、という順番が現実的です。なお、すでに通院・服薬している人は、自己判断でやめたり足したりせず、医療者に相談してください。ここにも個人差があります。
今夜の一手
今週、魚を食べた回数を指で数えてみてください。ゼロや一回なら、次の買い物で切り身を一つカゴに入れる。それだけで土台づくりの第一歩になります。焦って結論を出さず、まずは自分の食卓を知るところから。効果には個人差があります。


