スマホを置いた夜、手持ち無沙汰になる。その手を、たとえば窓辺の鉢に伸ばしてみる。土に触れ、枯れた葉を摘む。それだけで少し呼吸が深くなる気がする。気のせいだろうか。植物と心の落ち着きの関係は、小さいながら研究で調べられている。断定はできない。それでも、静かな夜の手がかりとして整理してみたい。

植物に触れると、体は落ち着くのか?

小さな無作為化研究では、パソコン作業に比べて植物の植え替え作業のあとに、体の緊張の指標が下がったと報告されている。

Lee らが 2015 年に J Physiol Anthropol 誌へ報告した交差研究では、若い男性 24 名が「植物の植え替え作業」と「パソコン作業」の両方を順不同で行った。植え替え作業のあとには、最低血圧の低下、交感神経の活動の低下、そして心地よく落ち着いた自然な感覚の高まりが見られたという。

眺めるだけでなく、手を動かして関わることに意味がありそうだ、という読み方ができる。ただし対象は若い男性 24 名のみで、しかも一時的な作業を比べたもの。ここから「植物を置けばストレスが消える」と広げるのは行き過ぎだ。

部屋に置くだけでも意味はあるのか?

オフィスに植物を置いた実地実験では、集中や満足度が高まったという報告がある。ただし限界も大きい。

Nieuwenhuis らが 2014 年に報告した 3 件の実地実験では、植物のないオフィスより植物を置いたオフィスのほうで、自己申告の集中・職場満足・空気の質の感じ方・生産性が高かった。取り戻した注意を保つ環境づくり、という文脈では心強い。

もっとも、これらは自己申告が中心で、対象の職場も限られる。正確な人数や割合は今回照合できなかったため、ここでは数値を出さない。植物は不調を治す道具ではなく、居心地と注意をそっと支える環境の一部——その距離感で捉えるのがちょうどいい。効果には個人差がある。

今夜の一手: 手のかからない一鉢から

大げさな模様替えはいらない。今夜できるのは、机か窓辺に「一鉢」置く算段をすることだ。世話の手間が心配なら、丈夫で手のかからない種類を一つだけ選ぶ。ときどき土に触れ、枯れた葉を摘む——スマホに伸びかけた手の行き先を、ひとつ用意しておく。取り戻した夜の時間に、緑の持ち場を小さく作ってみてほしい。