重い朝がある。目は開いているのに、頭のどこかにまだ霧が残っている。カーテンの外はどんよりと曇り、体は布団の重力に負けたままだ。こんな朝、シャワーの最後だけを冷水にすれば、この霧は晴れるのだろうか。

体感でも流行でもなく、査読された研究がどこまで言えているのかを、範囲を限って冷静に見てみる。
大規模な試験は何を調べたのか
まず押さえたいのは、最も規模の大きい研究が調べたのは「覚醒」そのものではなく、体調と仕事だったという事実だ。
Buijze et al. 2016は、18〜65歳の3018人を、温水の最後に冷水を30秒・60秒・1分半のいずれかで浴びる群と、ふつうに浴びる対照群へ無作為に割り付けた大規模なランダム化比較試験である。介入群は30日間、毎日の入浴の最後を冷水にした。主要な指標は「病気の日数」と「病欠」で、覚醒や気分は副次的な位置づけだった。つまり「冷たいシャワーで目が覚めるか」を正面から測った試験ではない、という前提から出発する必要がある。
結果はどこまで言えるのか
冷水群は自己申告の病欠が対照群より29%少なかった。ただし病気の日数そのものは変わらなかった、というのが正直な要点だ。
この試験では、冷水群の病欠の発生率比が0.71(P=0.003)で、対照群にくらべて約29%低かったと報告されている。一方で「実際に体調を崩した日数」には差がつかなかった。休むほどではないと感じて出勤した、とも読める微妙な結果だ。気分や活力についても、劇的な改善を約束するような結論は示されていない。だから「冷水で眠気が消える」という通説を、この研究だけで裏づけることはできない。低コストで試せる一手ではあるが、目覚まし薬ではない。効果には個人差があります。
安全に試すために気をつけること
忘れてはならないのは、冷たい刺激が心臓や血圧に負担をかけうるという点だ。
冷水を浴びると、体は急な寒さに反応して心拍や血圧を一時的に上げる。健康な人には短時間なら大きな問題になりにくいと考えられるが、心臓に持病がある人や血圧が高い人は、始める前に医師へ相談したほうがよい。体調がすぐれない日は見送り、無理のない短い秒数から様子を見る。合わなければやめる、という前提で扱うのが安全だ。これは医療の代替ではない。
今夜の一手: 明日の朝、最後の10秒だけ冷水にしてみる
- 温かいシャワーの最後に、水温を一段下げて約10秒だけ浴びる(約10秒)。 つらければすぐ戻してよい
- その日の頭の重さと気分を、5段階で心の中に一度だけ記録する。 数日ためして、自分に合うかを体で確かめる
スマホから離して取り戻した気力を、明日はからだの側から一度だけ試してみる。効くと決めつけず、効かないと切り捨てず。冷たさに何を期待するかを、自分の朝で測ればいい。それで十分だ。
