「1日2リットル」。よく聞く数字だ。だが、この一つの数字が誰にでも合うわけではない。汗をかく量も体格も違う。何も売らないので、研究の温度をそのまま書ける。固定のノルマを追うより、体の合図を読むほうが安全だ。
「1日◯リットル」に共通の正解はあるか
万人共通の一つの数値では示せない、が研究の答えだ。 Bakerらの2017年のレビューでは、発汗速度も汗のナトリウム濃度も個人内・個人間で大きく変動し、測定方法によっても結果が変わると整理されている。気温、運動量、体格、食事に含まれる水分——必要量を動かす要素は多い。だから固定の目標値を一律に当てはめるより、喉の渇きと尿の色(濃すぎない薄黄色が目安)を手がかりにするほうが、自分の体に合わせやすい。効果には個人差がある。
飲みすぎは問題にならないのか
多く飲むほど良い、ではない。過剰な飲水にはリスクがある。 運動関連低ナトリウム血症(EAH)の2015年の国際コンセンサス声明では、EAHの主因は発汗によるナトリウム喪失そのものではなく、運動中の過剰な水分摂取だと述べられている。予防の基本は、一律の大量飲水ではなく喉の渇きに応じた飲水だ。渇いてもいないのに義務感で飲み続けると、血中のナトリウムが薄まって不調を招くことがある。「足りない」を恐れるあまり、逆方向に振り切らないことも大事だ。
食事前の水は、どこまで言えるのか
「補助の一つ」という水準だ。 Parrettiらの2015年のランダム化比較試験では、肥満のある成人が毎食30分前に500mLの水を飲むと、12週後の体重減少が対照より平均1.3kg大きかったと報告された。ただし続けられた回数と関連し、若年成人では効果が小さいとする別試験もある。水は魔法ではない。あくまで日々の水分をとる一つのきっかけとして使うくらいが、期待の温度として妥当だ。
今夜の一手: ノルマを1つの合図に置き換える
今夜できるのは、「◯リットル」というノルマを、一つの体の合図に置き換えることだ。渇いたら飲む。尿の色が濃ければ少し足す、薄ければ十分。デスクや枕元にコップを一つ置いておくと、渇いたときにすぐ手が届く。数字に追われるのをやめると、水分補給はむしろ続けやすくなる。効果には個人差がある。

