夜、コップに溶かしたクレアチンを見つめて手が止まる。最初の数日は20gずつ、という話をどこかで読んだ。本当にその急ぎ方が要るのか。飽和という言葉の中身を、研究に沿って正直にほどいていく。

クレアチンにローディング期は必要なのか?
ローディング(20g/日を6日間)は筋クレアチンの飽和を速めるが、必須というわけではない。
Hultman et al.(1996)は、健康な男性が運動を控えた条件で20g/日を6日間摂ると、骨格筋の総クレアチン濃度が約20%増えたと報告している。その後は2g/日を30日続けるだけで、高くなった濃度が維持された。つまり短期間で一気に満たし、あとは少量で保つという道筋は確かに成り立つ。ただしこの「約20%」という到達点が、ローディングでしか届かない場所なのかどうかが次の問いになる。効果には個人差がある。
低用量を続けても、同じところに届くのか?
はじめから3g/日を28日続けても、より緩やかに同程度まで飽和すると報告されている。
同じHultmanの研究では、ローディングをせずに3g/日を28日続けた場合でも、筋クレアチンは約20%まで増えている。立ち上がりは遅いが、数週間という時間をかければ到達点はほぼ変わらない。別の文献レビュー(Kreider et al. 2017)も、クレアチン一水和物を安全で効果的なエルゴジェニックエイドと位置づけ、健常者では3〜5g/日を推奨用量としている。急いで満たすか、ゆっくり満たすか。差は速さであって、行き着く高さではない。反応には個人差がある。
では急いでローディングする意味はあるのか?
大会前など早く飽和させたい事情があれば速める価値はあるが、そうでなければ低用量で足りる。
数日で土台を整えたいなら、ローディングは飽和までの時間を縮める合理的な手段になる。一方で高用量を一度に摂ると、お腹が緩むなどの消化器の不快が出ることがあると一般に言われる[仮説]。急ぐ必要がないなら、あえて負担の大きい入り方を選ぶ理由は薄い。どちらを選んでも、最後に効いてくるのは毎日続けているかどうかだ。飲み忘れて途切れる方が、入り方の違いより大きく響く。感じ方には個人差がある。
今夜の一手: 続けやすい一杯を、まず決める
締め切りがないなら、3〜5g/日を毎日の習慣にひもづけるところから始める。早く飽和させたい事情があるときだけ、期間を区切ってローディングを検討すればいい。腎臓に持病がある人や通院中の人は自己判断せず専門家へ。効果には個人差があります。


