運動後のロッカー。シェイカーに何を入れるかで、棚には三つの選択肢が並ぶ。BCAA、EAA、そのままのプロテイン。値段も謳い文句も派手なのはBCAAだが、根拠の厚みで並べると景色が変わる。

採点基準を先に開示する
採点するのは、体づくりを支えるという主張にどれだけ研究がついているかだけだ。
味・溶けやすさ・価格・人気は採点しない。軸は研究の本数とデザイン、そして結論の一致度。「対決」「勝つ」はエンタメの言葉で、順位は効果の保証ではない。ここで扱うのは成分の研究紹介であり、特定商品の推奨ではない。効果には個人差があります。
BCAA単独は研究の厚みで勝てる?
苦しい。BCAAだけで同化反応が回るという主張は、根拠が乏しいと結論したレビューがある。
Wolfe 2017(レビュー)は、食事由来のBCAA単独摂取が筋タンパク質合成を刺激し同化反応を生むという主張について、ヒト研究の裏づけが乏しいと結論した。BCAAだけを与えた研究では合成がむしろ低下し、必須アミノ酸全体の供給が前提になると論じている。「BCAAは無価値」という話ではない。「単独で効くという主張が、この基準では支えきれない」ということだ。
EAAはBCAAより上か?
筋タンパク質合成の議論では、EAAのほうが土台に近い位置にある。
Wolfe 2017が指摘するのは、合成にはBCAAを含む必須アミノ酸がそろって供給されることが要る、という点だ。EAAはその全体を含む。ただしEAA単独サプリとふつうのたんぱく質食品を直接比べて優劣を決めた決定的な証拠は、今回照合した範囲では限定的だった。ここは「反証された」ではなく「まだ差を主張できるほど揃っていない」と読むのが正確だ。
プロテイン(総たんぱく質)は地味だが強い?
派手さはないが、日々の総たんぱく質量がいちばん厚い研究に支えられている。
Jäger et al. 2017(ISSNポジションスタンド)は、運動する人の多くにとって 1日1.4〜2.0g/kg体重で足り、1回あたりは0.25g/kgまたは20〜40gが目安と報告している。同化効果は運動後24時間以上続くため、最適タイミングは個人の許容度しだいとも述べる。特別なアミノ酸を足す前に、食事とプロテインで1日の合計を満たすことが土台になる。
判定: あなたの状況で選ぶ
- 土台をまず固めたいなら——食事+プロテインで1日の総たんぱく質量を満たすのが最優先。研究がいちばん厚い。
- 必須アミノ酸をまとめて摂りたいなら——BCAA単独よりEAA全体のほうが理屈に合う。
- BCAAを選ぶなら——単独で完結すると期待しないこと。あくまで全体の一部だ。
採点したのは研究の厚みで、あなたにとっての必要性ではない。効果には個人差があります。
今夜の一手: 明日のたんぱく質を1食だけ設計する
- 明日の食事から1食を選び、たんぱく質源(卵・魚・肉・大豆・乳など)を1つ足すと決める(約20秒)
- サプリを足すかは、その合計が足りない日だけ考える
派手なアミノ酸より、まず1日の合計。土台が決まれば、上に何を足すかは静かに見えてくる。


