スマホを充電器に置いて、夜の道を少し歩く。信号待ちの明かりだけが静かで、頭のなかも少しだけほどけていく。そんなとき、ふと思う。どのくらいの速さで歩けばいいのか、と。

歩く速さの目安はどう見積もる?

1分間の歩数(歩調)は、運動強度の簡単な目安になるとされています。 Tudor-Locke らの2018年のレビュー(British Journal of Sports Medicine)では、成人でおよそ100歩/分が中強度、約130歩/分あたりから高強度に入る目安として整理されました。歩数計や心拍計がなくても、1分間の歩数を数えるだけで自分の強度を大まかに見積もれる、という発想です。ただしこれはナラティブレビューによる実用的な目安であり、体力や年齢、その日の調子によって反応には幅があります。「速歩」と呼ばれるテンポも、あくまで一つの位置づけにすぎません。数字に追われるより、自分にとって少しだけ息が上がる感覚を手がかりにするくらいでちょうどよいのかもしれません。

たくさん歩くほどよいの?

歩数の多さは、死亡リスクの低さと関連することが観察研究で報告されています。 Paluch らの2022年のメタ分析(Lancet Public Health・15の国際コホート・成人47,471名・追跡中央値7.1年)では、歩数が多い群ほど全死因死亡リスクが低い傾向がみられました。著者は最適域を、60歳以上でおよそ6,000〜8,000歩/日、60歳未満で8,000〜10,000歩/日と整理しています。ただしこれは観察研究であり、因果を示すものではありません。速く歩けたか、目標歩数に届いたかを毎回採点する必要はありません。速さより続けやすさ。今日歩けなかった自分を責めないことのほうが、たぶん長く続きます。

今夜の一手: 1分だけ歩数を数える

今夜は、歩きながら1分間だけ歩数を数えてみる。それ以上は求めない。速く歩こうとしなくていいし、数字が少なくても気にしなくていい。ただ「今の自分はこのくらいのテンポなんだ」と知るだけで十分です。目安はレビューや観察研究から借りたものなので、自分の体の感覚とすり合わせながら使ってください。効果には個人差があります。