夜、階段をのぼると膝が少しこわばる。走るのはこわいけれど、何か有酸素運動を続けたい気持ちはある。そんなとき、まず迷うのが何を選べばいいのかという一点だ。

「低衝撃」とは何を指す?

着地の衝撃が小さい運動を低衝撃と呼び、歩行・自転車・水中運動などがそこに含まれるとされます。 走行やジャンプのように地面から強く跳ね返るタイプは高衝撃で、膝や関節に不安があるときは、まず衝撃の小さい種目から試すのが穏やかな入り方です。ただし「低衝撃だから絶対に痛めない」という話ではありません。痛みが続く、腫れる、以前より動かしにくいといったときは、自己判断で運動を続けず、医療機関への相談を検討してください。ここで扱うのはあくまで一般的な選び方の整理で、症状のある膝の診断や対処とは別の話です。

種目が違うと健康効果も大きく変わる?

健康への効きは種目そのものより、続けて消費したエネルギーの量とおおむね結びつくと報告されています。 Williams と Thompson の2013年の観察研究(ランナー33,060名+ウォーカー15,945名)では、運動量を消費エネルギーでそろえて比べると、走行と歩行で高血圧やコレステロール、糖尿病のリスク低下はおおむね同程度で、歩行の係数はむしろ同等以上でした。これは観察研究なので因果までは示せませんが、「派手な種目でないと意味がない」わけではないことを示唆します。Loftin らの2010年の報告でも、1マイルを進むときの総消費エネルギーは歩行とランナーでおおむね近く、差が出るのは体重あたりや時間あたりで表したときでした。低衝撃の種目でも、量を確保すれば見劣りしにくいと考えられます。

どれくらいやれば目安になる?

歩行なら「歩数」という量の目安があります。 Paluch らの2022年のメタ分析(15の国際コホート・成人47,471名)では、歩数が多い群ほど全死因死亡リスクが低い傾向がみられ、最適域は60歳以上でおよそ6,000〜8,000歩/日、60歳未満で8,000〜10,000歩/日と整理されました。これも観察研究で因果は示せませんが、量の見当をつける手がかりになります。自転車や水中運動は歩数で測れないので、時間や「少し息が上がる」感覚を目安にするとよいでしょう。数字を競うためではなく、続いているかを確かめるためのものです。

結局、どう選べばいい?

優劣ではなく、あなたの条件で選ぶのが現実的です。 膝の負担が心配なら、走行より衝撃の小さい歩行・自転車・水中運動から。退屈で続かないなら、気分が乗る種目や景色の変わる場所を。天気や時間に左右されたくないなら室内の自転車や施設の水中運動を、というふうに、条件分岐で決めていきます。歩行・自転車・水中を直接比べた質の高い試験は限られているので、どれが一番かにこだわるより、痛みが出にくく続けやすいものを選ぶほうが、結局は量につながります。効果には個人差があります。

今夜の一手: 明日ためす低衝撃を一つだけ決める

今夜は、明日ためす低衝撃の種目を一つだけ決めておく。近所を10分歩く、室内の自転車を漕ぐ、その程度で十分です。完璧なメニューを組む必要はありません。膝に不安があるなら、痛みが出ない範囲で、続けられそうなものを一つ。合わなければ明日また選び直せます。