「なんとなく気分が晴れない。ビタミンDでも飲んでみようか」。SNSでも雑誌でも、日光とビタミンDで気分が上がるという話はよく流れてくる。その通説を、これまでで最大級の試験に照らしてみる。

「ビタミンDで気分が上がる」は本当か
健康な成人を対象にした大規模な比較試験では、その効果は確認されなかった。
Okereke 2020(JAMA・VITAL-DEP)は、50歳以上の成人1万8千人余(N=18,353)を対象に、ビタミンD3を2000 IU/日か、見た目が同じ偽薬(プラセボ)かに、くじ引きのように振り分けて追跡した。追跡の中央値は5.3年。サプリ研究としてはかなり大規模で、期間も長い。
結果は、はっきりしていた。ビタミンD3を長期に補給しても、抑うつ症状の発生や再発、気分スコアの変化に、プラセボとの意味のある差はなかった(ハザード比0.97・P=.62)。「気分の底上げをビタミンDのサプリに期待する」根拠は、この試験からは得られなかった。
なぜ「効きそう」に感じるのか
「ビタミンDが低い人は気分も沈みがち」という観察は、飲めば上向くことを意味しない。
血中のビタミンDが低い人ほど気分が落ちている、という観察報告は確かにある。だが観察でわかるのは「一緒に起きている」ことまでで、どちらが原因かは決まらない。外に出ない生活そのものが両方を同時に下げているのかもしれない。
だからこそ、くじ引きで振り分けて比べる比較試験が要る。今回のVITAL-DEPはそれをやった。そして「錠剤でビタミンDを足しても気分は変わらなかった」と示した。相関の強さと、サプリで足したときの効果は、別の話として扱う必要がある。
ではビタミンDは無意味なのか
そうではない。役割を取り違えないことが大切だ。
ビタミンDはカルシウムの吸収に関わる栄養素で、厚生労働省の解説でも体に必要な栄養素として扱われている。不足しているならその是正には意味がある。ただしそれは「骨や栄養の土台」の話であって、「気分を上向かせる」効果とは別の目的だ。サプリに何を期待するかを、混ぜないほうがいい。効果には個人差があります。
そして、もし気分の落ち込みが何週間も続いているなら、それはサプリで押し返す話ではない。自己判断で足す前に、専門家に相談するほうが確かだ。
今夜の一手: 「目的」を1行だけ書き分ける
今日やるのは、サプリを増やすことでも、やめることでもない。
- いま気になっているのが「栄養の不足」なのか「気分の落ち込み」なのかを、1行で書き分ける(約20秒)
- 前者なら食事や検査値の話として、後者なら休養や相談の話として扱うと決める(決めるだけ)
同じ「なんとなく不調」でも、入口を分けると打ち手が変わる。ビタミンDのサプリは万能の気分薬ではない。取り戻したいのが気力なら、材料はもっと手前にある。

