お腹が空いた夜、食卓につくといきなり主菜に手が伸びて、気づけば食べすぎている。そんなとき「先にスープを一杯」という昔ながらの知恵は、本当に食べすぎを抑えるのか。おばあちゃんの知恵にも、実は研究の裏づけがある。数値と限界の両方を、正直に見てみる。

食前のスープで、その食事の量は変わる?

低カロリーのスープを先にとると、その食事での総摂取エネルギーがおよそ2割少なかったと報告されている。 Flood と Rolls が 2007 年に報告した無作為化の実験では、標準体重の男女 60 名が昼食の 15 分前にスープをとると、スープなしに比べて昼食全体の摂取エネルギーがおよそ 20% 低かった。しかも澄ましスープでも具入りでもピューレでも、形態による差はほとんどなかった。先に汁物でお腹を穏やかに満たすと、そのあとの食事が自然と軽くなる、という結果だ。

同じ水分なら、水を飲めば同じ?

鍵は水分そのものより、水を食べ物に溶かして『エネルギー密度』を下げることだ。 Rolls らが 1999 年に報告した実験では、同じ材料を「スープ」にしたときは昼食の量が減ったのに、同じ量の水を「飲み物」として別に足しても減らなかった。つまり、水を飲むこと自体ではなく、水が食べ物と一体になってかさを増し、同じ重さあたりのカロリーが下がることが効いている。汁物という形が理にかなっているのは、このためだ。

長い目で見た体重とは、どう関係する?

『スープをよく食べる人は肥満が少ない』という関連は報告されているが、因果ではない。 米国の大規模な横断研究では、スープを食べない人は過体重・肥満のリスクが高い関連(調整オッズ比 1.381)が示され、7 件・計 4 万 5 千人超をまとめたメタ分析でも、スープを食べる人は肥満のオッズがおよそ 15% 低い関連が報告されている。ただしこれらはある一時点の観察であって、「スープを足せば体重が減る」と言い切れるものではない。もともと気をつけている人がスープを選んでいる可能性も残る。効果には個人差がある。

どこまで期待していい?

減量の道具というより、食べすぎやすい場面を穏やかにする一手だ。 摂取が減った実験の多くは単発・短期の設定で、体重そのものを追った無作為化試験はまだ乏しい。だから過大な期待は禁物だが、「食事を削る」のではなく「汁物を一品足す」だけで済むのは、続けやすさの点で大きい。食べる量を無理に我慢する必要はない。極端な食事制限に傾きそうなときは、一人で抱えず専門家に相談してほしい。

今夜の一手: 主菜の前に、汁物を一品

明日の食事に、湯気の立つ汁物を一品だけ足す。みそ汁でも、野菜のスープでも、澄ましでもいい。先に一杯を穏やかに飲んでから主菜へ向かう。食べる量を数えて減らすのではなく、満たしてから食べるという順番の工夫だ。合わなければやめていい。無理なく続く形だけ、残せばいい。効果には個人差があります。