派手な容器の裏面に、細かい文字で20近い成分名が並んでいる。一つひとつは聞いたことがある気もするが、どれが効いていて、どれが飾りなのかは分からない。そこで、宣伝でも体感でもなく、成分表示そのものを分析した研究から分解してみる。

サプリ容器の裏面ラベルを読む手元のイラスト

採点基準を先に開示する

物差しは2つ。その成分に研究の厚みがあるか。そして、市販の配合量が研究で使われた量に届いているか。

この2つを分けるのが今回の肝だ。「有効な成分が入っている」ことと「有効とされる量が入っている」ことは、まったく別の話だからだ。体感や売れ筋は採点しない。特定の製品を勧めることも、けなすこともしない。効果には個人差があります。

分解: 平均18.4成分、そのうち8.1成分は量が分からない

成分名の多さは、根拠の多さではない。

Jagim et al. 2019(Nutrients)は、市販上位100製品の成分表示を分析している。それによると、1製品あたりの平均成分数は18.4±9.7。そのうち8.1±9.9成分が、量を開示しないプロプライエタリブレンドに含まれていた。全成分に占める割合にすると44.3%だ。

同研究は、この表示形式では有効量が入っているかを判別できないと指摘している。ブレンドの中で一つの成分が大部分を占め、他が有効とされる量を大きく下回っていても、表示の上では見分けがつかないからだ。

つまり半分近くの成分については、そもそも採点の土俵に乗らない。

採点: 研究の厚みが残るのは、ごく一部だった

配合率の高い3成分を、研究の用量と突き合わせる。

カフェイン(配合率86%・平均254.0±79.5mg)。 Guest 2021(国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド)は、カフェインが3〜6mg/kg体重で運動成績に有効、最小有効量は2mg/kg程度と報告している。体重70kgなら210〜420mgにあたる範囲で、市販の平均254mgはこの幅に収まる。研究の厚みも用量の一致も、3成分の中では最もそろっている。ただし同文書は、反応の個人差が遺伝的な変異や代謝、習慣的な摂取量に起因しうるとも述べている。

シトルリン(配合率71%・平均4.0±2.5g)。 Trexler 2019(Sports Medicine・系統的レビュー+メタ分析)は、急性摂取が高強度の筋力・パワー系種目でプラセボより有意に成績を改善したと報告している。ただし統合効果量は0.2と小さい。「効かない」ではなく「効くとしても小さい」というのが、現時点の書きぶりだ。

βアラニン(配合率87%・平均2.0±0.8g)。 ここが今回いちばんのねじれだ。Trexler 2015(ISSNポジションスタンド)が報告しているのは、4〜6g/日を数週間続けることで筋カルノシンが増え、1〜4分持続の高強度運動で成績改善が最も顕著、という話だ。これは継続摂取の枠組みであって、運動直前の1回で完結する設計ではない。配合率は最も高いのに、市販の1回量2.0gは研究の1日量を下回る。

判定: 「3つ残る」というより「1つ半」に近い

条件付きで書くと、こうなる。

  • あなたが求めているのが覚醒なら、材料はカフェインにほぼ集約される。コーヒーでも成分としては同じだ。
  • あなたが1〜4分の高強度種目をやるなら、βアラニンは候補になる。ただし研究の形は毎日続けるほうだ。
  • 表示にプロプライエタリブレンドとあるなら、その部分は判定不能として扱うしかない。

「効いてる成分は3つだけ」という見出しはエンタメだ。厳密に言えば、用量まで含めて研究と噛み合っていたのは1つで、条件付きがもう1つ、というのが今回の結論になる。

今夜の一手: 裏面の1行だけ確かめる

今日やるのは、買い替えではない。確認だ。

  1. 手元の製品の裏面を見て、プロプライエタリブレンドの表記があるか探す(約20秒)
  2. あるなら、その中の成分は「量が不明」と頭の中で仕分けしておく(判断を保留するだけでいい)

サプリは土台の上に少し足すものだ。睡眠と食事という一番効く土台に、取り戻した気力を先に向けたほうが、たいていは近道になる。