減塩、と言われて続いた人がどれだけいるだろう。味気ない食事に耐えて、数日で戻る。夜の食卓で、そんな挫折を何度も繰り返した人は多いはずだ。そこに「引く」だけでなく「足す」という別の入口がある。カリウムだ。

塩と野菜を見比べる夜の台所

ナトリウムとカリウムの「比」とは何か

研究がよく見ているのは、ナトリウム単体でもカリウム単体でもなく、その比だ。 米国の大規模な調査(NHANES)を使った横断研究では、ナトリウム/カリウム比が0.5単位上がるごとに収縮期血圧がおよそ1.05mmHg高い傾向が報告されている。比が最も高い群は最も低い群に比べ、高血圧である割合も高かった。塩を摂り過ぎることと、カリウムが足りないことは、同じ物差しの両側にある——そう読める結果だ。

「足す」だけで済む話?

残念ながら、足せば引かなくていいという話ではない。 比を下げる道は二つある。ナトリウムを減らすことと、カリウムを増やすことだ。どちらか片方だけに賭けるより、両方を少しずつ動かすほうが理にかなう。厚生労働省の解説では、日本人は日常的に食塩を摂り過ぎ傾向にあり、食塩相当量の目標は成人男性7.5g/日未満・女性6.5g/日未満とされている。まず「引く」余地があるのは確かだ。そのうえで、野菜や果物からカリウムを「足す」。この二本立てが現実的な向き合い方になる。

この研究をどこまで信じていい?

横断研究は関連を示すもので、因果を証明するものではない。 著者自身が、結果は注意して解釈すべきだと明記している。ある一時点で「比が高い人は血圧も高かった」という観察であって、「比を下げれば血圧が下がる」と因果まで言い切れるわけではない。ここで扱っているのは集団の傾向であり、あなた個人にそのまま当てはまるとは限らない。血圧や腎臓に不安のある人、薬を使っている人は、食事を大きく変える前に医療機関に相談してほしい。カリウムは摂り方に注意が要る人もいる栄養素だ。

今夜の一手: 一品、色を足す

明日の食事に、緑か色のある一品を足す。ほうれん草のおひたし、バナナ、豆、いも——カリウムは特別なサプリではなく、こうした日常の食品に入っている。同時に、汁物の汁を半分残す、麺のスープを飲み干さない。引く一手と足す一手を一つずつ。比は、その小さな両側から静かに動く。