「寝る前のスマホをやめたいなら、寝室の外で充電するといい」。よく聞く助言だ。枕元にあると、つい手が伸びる。でも本当に、置き場所を変えるだけで眠りは変わるのか。定番の助言に、研究はどこまで応えているのか。相関どまりの限界も含めて、正直に並べてみたい。

「そばにあるだけ」でも眠りに響く?

端末を使わなくても、寝室にあること自体が睡眠の悪さと関連したと報告されている。 Carter らが 2016 年に報告した、12 万人超・17 件をまとめたメタ分析では、就寝時に端末を「使う」ことはもちろん、「使わずそばにあるだけ」でも睡眠不足のオッズ比 1.79、日中の強い眠気とも関連していた。手の届く所にあると、つい確認したくなる引き金になりやすい——そう読める結果だ。ただし後で述べるように、これは関連であって因果ではない。

置き場所より、使い方の問題では?

就寝前の使用を控えた実験では、寝つきや睡眠の質が改善したと報告されている。 He らが 2020 年に報告した無作為化のパイロット試験では、大学生 38 名が就寝前 30 分のスマホ使用を控えたところ、寝つきの時間が 30.98 分から 18.38 分へ短くなり、睡眠の質の指標も改善した。ここで正直に言っておきたいのは、この研究は「使用を控えた」ものであって、「寝室から物理的に外した」ことを検証したわけではない点だ。実は、寝室からの除去だけを取り出して調べた実験は、まだ見当たらない。

この関連を、どこまで信じていい?

多くは横断研究で、因果ではなく関連にとどまる。 Fuller らの 2017 年の調査でも、就寝時に携帯がある子はおよそ 1 時間睡眠が短く、朝の疲労感と関連していた。だがこれらはある一時点の観察であり、「端末を外せば眠れる」と言い切れるものではない。むしろ逆に、眠れない人ほど手元に端末を置いて過ごす、という向きも十分ありうる。研究者もこの逆因果の可能性を認めている。だから「寝室から外す」は、証明された対処法ではなく、証拠と矛盾しない無理のない習慣、という位置づけが誠実だ。

手放せない事情があるなら?

目覚まし用途などは、置き換えで両立できる。 スマホを目覚ましに使っているなら、安価な目覚まし時計に役割を渡し、本体は寝室の外で充電する。完璧にゼロにしなくていい。まず 1 日だけ試して、朝の感じが変わるかを見てみる。合わなければ戻せばいい。意志で我慢するより、置き場所を変えて手が届きにくくするほうが、続けやすいことが多い。

今夜の一手: 今夜だけ、充電器をドアの外へ

今夜、スマホの充電器を寝室のドアの外に移す。枕元には、時計と、読みかけの本だけを残す。たった一晩の実験でいい。手を伸ばした先にスマホがないだけで、夜の時間の使い方は少し変わる。相関どまりの知見ではあるけれど、試すコストはほとんどない。睡眠の悩みが続くなら、生活習慣だけで抱えず医療機関に相談を。感じ方には個人差があります。