布団に入ってからも、暗い部屋でスマホの光を見つめてしまう。「寝る前の一定時間はスマホを手放す」——デジタル・サンセットと呼ばれるこの習慣を、眠りに良いと紹介する声は多い。けれど、それはどこまで研究で確かめられているのだろう。就寝前のスマホ制限を調べたランダム化試験を手がかりに、効果と限界を整理していく。

入口の外で充電するスマートフォンと月・枕へ続く光の静物画像

寝る前にスマホを手放すと、睡眠に何が起きるのか?

就寝前30分スマホを使わない群は、寝つきや睡眠の質が改善したと報告されている。

He ら(2020)は、就寝前の30分間はスマホを使わないよう指示された群と、指示のない群にランダムに分けて4週間比較した。その結果、手放した群では寝つくまでの時間が短くなり、睡眠時間と睡眠の質が改善したと報告されている。さらに、就寝前の覚醒(なかなか頭が休まらない状態)が下がり、前向きな気分やワーキングメモリの成績も向上していた。寝る前の刺激を一段減らすことが、眠りに向かう準備を助ける方向に働きうる、という読み方ができる。

この結果を、どこまで信じてよいのか?

参加者38人の小規模な予備試験で、完全に断つ根拠としてはまだ弱い。

ここで立ち止まりたいのは、研究の規模だ。この試験の参加者は38人と少なく、位置づけも予備的なものだった。つまり「就寝前スクリーンを完全に断てば眠れる」と結論づけるには、まだ研究が足りない。睡眠には、光・カフェイン・生活リズム・ストレスなど多くの要因が関わる。だから「スマホさえ断てば解決」ではなく、「寝る前の一定時間を静かにする一手になりうる」くらいの温度で受け取るのが正直だろう。

続けるとしたら、どう設計すればいいのか?

意志で我慢するより、手放すきっかけを先に用意する。

研究で使われたのは「就寝前30分は使わない」という設定だった。いきなり何時間もではなく、まず30分から始めるほうが続けやすい。そして続ける鍵は、意志の強さより設計にある。充電場所を寝室の外にする、寝る前は別の部屋で充電する、といった「手が届かない状態」を先に作っておくと、我慢の量が減る。デジタル・サンセットは、スマホを敵にする儀式ではなく、寝る前の自分に静けさを渡す準備として捉えるほうが、無理なく続く。

今夜の一手: 充電場所を、手の届かない所へ移す

今夜からスマホを何時間も手放さなくていい。決めるのは、今夜の充電場所を、ベッドから手が届かない所へひとつ移すこと。意志で我慢するのではなく、届かない状態を先に作る。眠れない状態が続くときは、無理をせず医療機関に相談してほしい。