「明日から一切見ない」。深夜に何度この誓いを立てて、何度破っただろう。 実は、その誓い方そのものが分の悪い作戦だったかもしれない—— 619人で試した実験の話をしよう。
完全にやめるのと減らすの、どっちが続く?
「1日1時間だけ減らす」が上回った、という報告がある。
619人を3つのグループに分けた無作為化比較試験(Brailovskaia 2022)では、 ①7日間スマホを完全に断つ群 ②使用を1日1時間だけ減らす群 ③何もしない群を比較した。 結果、削減群は4ヶ月後も1日あたり約45分の使用減が持続し、 生活満足度や身体活動の増加も報告された。完全断ち群より削減群のほうが、 長期の変化として残ったのだ。
「ゼロにする」は勇ましいが、続かない。「1時間減らす」は地味だが、残る。
なぜ「ゼロ」より「1時間」が勝つのか
考えられる理由はシンプルだ。ゼロは一度の失敗で崩れる。
完全断ちを誓うと、1回開いた瞬間に「もう台無しだ」が発動して、 そのまま反動の暴食のように画面へ戻ってしまう。 一方、習慣形成の研究(Lally 2010、N=96)では、 1回のスキップでは習慣形成は実質壊れないことが報告されている。
つまり、失敗しても崩れない目標設計のほうが、人間の実際の挙動に合っている。 スマホとの距離も同じで、ゼロという完璧な目標より、 「昨日より1時間少ない」という達成できる目標のほうが、 「やれた」の実感を積み上げられる。
今夜の一手: ゼロを誓わない
今夜やることは、誓いを小さくすることだ。
- 「明日は一切見ない」を捨てる。 代わりに「明日は1時間だけ減らす」と決める
- スクリーンタイム(iPhone)やDigital Wellbeing(Android)で、 一番時間が溶けているアプリ1つだけに時間制限をかける(約1分)
- 減らした1時間で何をするかを1つ決めておく(風呂・本・ストレッチ、何でもいい)
3つ目が実は大事で、時間は「空ける」だけだと元の場所に戻る。 行き先を決めた時間だけが、取り戻した時間になる。