目が覚めて、まだ頭がぼんやりしているうちに、手はもう枕元のスマホを探している。通知を眺め、タイムラインをたどるうちに、気づけば布団の中で15分。一日の最初の景色が、他人の投稿と未読の数字になっている。朝の最初の1時間を画面なしで始めたら、何が変わるのだろう。

朝の光には、どんな役割がある?

朝の強い光は体内時計を前進させると、公的機関が解説しています。 厚生労働省のe-ヘルスネット「体内時計」では、朝の強い光が体内時計を前に進め、夜の光は遅らせると説明されています。つまり、起きてすぐに小さな画面をのぞき込むより、カーテンを開けて窓の明るさを浴びるほうが、一日のリズムの立ち上がりには沿っているということです。これは病気を治すといった話ではなく、朝の光が概日リズムの調整に関わるという生理の解説です。スマホの画面の光は、朝の窓辺の明るさに比べればずっと弱いものです。朝いちばんを画面でなく光に使う、という置き換えには、こうした土台の理屈があります。

スマホがそばにあるだけで、何か起きる?

手に取らなくても、そばにあるだけで注意の資源が下がったという報告があります。 Ward らの2017年の実験(2つの実験)では、自分のスマホが手の届く場所にあるだけで、たとえ手に取らずにいても、ワーキングメモリなどを測る課題の成績が下がったと報告されました。スマホを別室に置いた条件が最も成績がよく、机の上やポケットにある条件では劣っていました。これは実験室での課題成績に基づく知見なので、朝の生活にそのまま当てはまるとまでは言えません。それでも、頭がまだ立ち上がりきらない朝のうちは、視界の端にある画面の存在そのものが、静かに注意を引いている可能性はあります。

朝に手が伸びるのは、意志が弱いから?

そうとは限らず、退屈や習慣による自然な反応と理解できます。 大学生515名を対象にした横断研究では、退屈しやすい人ほど問題のあるスマホ使用の得点が高いという関連が報告されました。横断研究なので因果の方向は分かりませんが、目覚めた直後の手持ち無沙汰に手が伸びるのを「意志が弱いからだ」と責める必要はありません。必要なのは反省ではなく、手が伸びにくい環境です。スマホを枕元から少し遠い場所で充電する、目覚ましを別に用意する、起きたらまずカーテンを開ける。そうした小さな段取りが、朝いちばんの1時間を画面から守ってくれます。

今夜の一手: スマホの充電場所を枕元から動かす

今夜できるのは、スマホの充電場所を枕元から一歩ぶん遠ざけておくこと、それだけです。手を伸ばせばすぐ届く場所から、立ち上がらないと届かない場所へ。明日の朝、最初に触れるのが画面ではなく、窓の光やコップの水になるように。完璧に断つ必要はありません。まずは朝の1時間の入口を、ひとつだけ変えてみる。効果には個人差があります。