音は消した。バナーも切った。それなのに、ホーム画面を開くたび、アイコンの右上の赤い数字が目に入る。3、7、12。処理していない何かがそこにある気がして、つい開く。開けば十数分が溶けている。あの小さな数字は、なぜこれほど引っかかるのか。全部オフにする以外に、手はないのか。一次情報から考えてみたい。
音がないのに、なぜ開いてしまうのか?
スマホは手の届く場所にあるだけで、利用できる注意資源が下がると報告されている。 Ward らが2017年に行った実験では、自分のスマホが視界にあるだけで、手に取らなくても作業記憶などの課題の成績が下がった。別室に置いた条件が最も成績がよく、机の上にある条件では劣ったという。赤いバッジの数字は、音がなくても目に入るたびに「未処理がある」と知らせ続ける、視覚的な合図だ。開くのは意志が弱いからではなく、合図が視界に残り続けているから、と捉えるほうが実態に近い。
では、全部オフにすればいいのか?
全遮断が最適とは限らず、1日数回のまとめ受信のほうが良好だったと報告されている。 Fitz らが2019年に237人で調べた研究では、通知を全部オフにするより、1日3回程度にまとめて受け取るほうが、幸福感や注意の面で良好だった。全遮断はかえって不安やFoMO、つまり見逃し不安と関連したという。だから狙うべきは、全か無かの中間だ。大事な連絡は届くようにしつつ、視界に残り続ける合図だけを間引く。バッジは、その間引きにちょうどいい対象になる。
バッジを消すと、何が変わるのか?
目に入る合図が一つ減り、開く理由が一つ減る。 Grüning らが2023年に示したのは、開く前に一手間を挟むだけで起動が減るという方向だ。バッジを消すことは、その逆、つまり「手間ゼロで目に入る合図」を取り除く発想に近い。数字が見えなければ、反射的に開くきっかけが薄れる。配信そのものはまとめて受け取り、自分の決めたタイミングで確認する。合図に呼ばれて開くのではなく、自分から見にいく形に変える。劇的な変化を保証はできないが、理屈は通っている。
今夜の一手: よく開くアプリ1つのバッジを、今すぐ消す
設定を開いて、自分がいちばん反射的に開いてしまうアプリを1つ選び、そのバッジ表示だけを今すぐオフにする。通知そのものは残していい。消すのは、視界に灯り続ける赤い数字だけだ。明日、ホーム画面を見て、そこに数字がないことに気づく。呼ばれないと、人は少しだけ自分のペースを取り戻せる。まず1つ、それで十分だ。


