夜、テレビを見ているつもりが、気づけば手のなかでスマホをスクロールしている。開いた記憶すらない。「またやってる」と自己嫌悪。意志の問題だと片づけて、また明日を待つ。
つい見てしまうのは意志の弱さ?
そう決めつけないほうがいい。合図(きっかけ)の問題として見ると景色が変わる。 ある横断研究(Addictive Behaviors・大学生515人)は、退屈しやすい人ほど問題的なスマホ使用の得点が高いという正の関連を報告した。手持ちぶさたという「合図」が来るたびに、手がスマホに伸びる回路ができている、という見立てだ。ただしこれは一時点で測った横断研究で、退屈がスマホ使用を生むのか、その逆かまでは決められない。それでも、自分を責める代わりに「どんな合図で手が伸びるか」を観察するほうが、次の一手につながる。
合図を別の行動に結びつけ替えるには?
「この合図が来たら、これをする」と先に決めておくのが効く。 Gollwitzer & Sheeran 2006(94検定のメタ分析)は、if-thenプランニング(実行意図)が目標達成をd=0.65で高めると報告した。「手持ちぶさたを感じたら、コップ一杯の水を飲む」のように、合図と別の小さな行動をあらかじめ結んでおく。ただし同じ研究は、強い衝動の下では計画だけでは効きにくく、環境の設計との併用が前提だとくぎを刺している。Milkman 2014の「誘惑の抱き合わせ」も、当初は行動が増えたが効果は時間とともに弱まった。つまり合図の入れ替えは魔法ではない。スマホを別の部屋に置くなど、手が届きにくい環境とセットにして初めて続く。
今夜の一手: 合図をひとつ、水に変える
今夜は「手持ちぶさたを感じたら、まずコップの水を一口」と決めておく。あわせて、スマホを腕の届かない場所に置く。合図が来たときに、スクロールの前に水がはさまれば、それだけで回路に隙間ができる。空いた数分は、明日の自分を助ける小さな余白になる。「退屈は合図/if-thenはd=0.65・でも環境が前提」と一行メモしておけば、うまくいかない夜も、意志ではなく設計の問題として立て直せる。

