早く食べ終えたくて、味を覚えていないまま皿が空になっている。気づけば手が次のひと口に伸びていて、満腹の合図はどこかで置き去りになっている。よく噛んで味わうと、食べ過ぎは本当に減るのだろうか。

よく味わうと、食べ過ぎは減る?
マインドフルネス瞑想は、過食や感情的な食べ過ぎを和らげたとする報告がある。 Katterman らの2014年の系統的レビューは、マインドフルネス瞑想を主な介入とした14の研究を集めて整理した。その結果、過食(binge eating)と、感情に押されて食べる感情的摂食が、複数の集団で減少したと報告されている。味や満腹感に一口ずつ気づく練習が、勢いで食べ続ける流れに小さな間を作りうる、という方向だ。効果には個人差がある。
味わえば体重は減る?
そうとは言い切れない。同じレビューは、体重への効果は一貫しないと報告している。 過食や感情的摂食が和らいだ一方で、体重が確実に落ちるという結果はそろわなかった。つまりマインドフルイーティングは、体重を動かす技術というより、食べ方との付き合いを穏やかにする練習として捉えるほうが、証拠の実態に近い。数字を減らす道具として使うと、かえって焦りと自己批判を呼びやすい。
味わうのが下手でも意味はある?
ある。これは意志の強さを測る試験ではない。 食べ過ぎは、性格の弱さや根性の問題として起きるのではなく、疲れや感情、環境が重なって生まれることが多い。だからうまく味わえない日があっても、自分を責める必要はない。我々が扱うのは、失敗を減点する話ではなく、気づいたらまた一口に戻る、というやり直しのきく練習だ。完璧を目指すほど続きにくくなる。
今夜の一手: 最初の三口だけ、箸を置いて味わう
食事のはじめの三口だけ、口に入れたら一度箸を置く。噛みながら、味と温度と、体がどのくらい満ちてきたかに気づく。それだけでいい。残りは普段どおりでかまわない。もし食べることのつらさが続くなら、一人で抱えず、公的な相談窓口や医療者を頼ってほしい。

