部活やジムで「喉が渇く前に飲め」と教わった人は多い。渇いてからでは遅い、と。だが運動中の水分補給を一次情報でたどると、話はもう少し慎重だ。量を増やせば安心、という単純な話ではないらしい。断定はしない。効果には個人差があります。

ボトルを手に飲むか迷う運動中の人のイラスト

「渇く前に飲む」は研究で裏づけられている?

一律に大量へ飲むことは、国際コンセンサスでは推奨されていない。

運動関連低ナトリウム血症(EAH)の第3回国際コンセンサス会議 声明 2015は、EAHの主因が発汗によるナトリウム喪失そのものではなく、運動中の過剰な水分摂取だと述べる。そして予防の基本を「喉の渇きに応じた飲水」に置き、一律の大量飲水を推奨しないと明記している。

つまり「渇く前にどんどん」は、状況によってはリスク側に振れうる。渇きは無視すべき敵ではない。体からの信号として、そのまま手がかりに使える。

どれくらい飲めばいい、という数字はある?

万人共通の「この量」は、研究側からは示せない。

Baker 2017(方法論レビュー)は、発汗速度と汗中ナトリウム濃度が、個人内でも個人間でも大きく変動し、測定方法によっても結果が変わると指摘する。だから「全員がコップ何杯」という単一の数値は、原理的に作れない。

当社としても、ここで新しい推奨量を発明することはしない。数字が欲しくなる場面ほど、個人差が大きいという事実のほうが効いてくる。効果には個人差があります。

では現実には、どうすればいい?

渇きを手がかりにしつつ、暑さ・運動時間・発汗の多さで微調整する。

研究が言えるのは「一律の大量飲水を勧めない」「共通の数値はない」までだ。そこから先は、自分の条件に合わせる領域になる。長時間・高温・大量発汗なら必要量は上がるし、短時間の軽い運動なら渇きに応じるだけで足りることが多い。

持病がある人、水分やナトリウムの管理を医師から指示されている人は、その指示が優先する。これは医療上の助言ではない。迷ったら、量を盛るより主治医に確認するほうが早い。

今夜の一手: 明日の運動の「飲み方」を1つだけ決める

今日やるのは、量の計算ではない。

  1. 明日の運動時間と暑さを思い浮かべる(約10秒)
  2. 「渇きに応じて飲む/長時間だから少し多めに」のどちらか一方だけ決めておく

迷いを減らすと、体が出している信号に気づく余裕が戻ってくる。