久しぶりに運動した翌々日、階段を下りるたびに太ももが痛む。運動した直後は平気だったのに、なぜ時間差でやってくるのか。よく「乳酸がたまったから」と言われるが、研究を読むと少し違う絵が見えてくる。

その痛みは、乳酸のせい?

遅れて来る筋肉痛は、乳酸ではなく、筋を伸ばしながら力を出す動きによる軽い損傷と結びつくと報告されている。 Cheung らの 2003 年のレビューでは、慣れない運動やエキセントリック運動の後に来る痛みは、乳酸ではなく筋の損傷と関連づけられている。乳酸は運動後わりと早く消えるので、翌日以降まで残る痛みの説明にはなりにくい。階段を下る、坂を下る、ダンベルをゆっくり下ろす——こうした「伸ばしながら耐える」動作でとくに強く出やすい。

なぜ、その場ではなく翌日に来る?

痛みは運動の24〜72時間後にピークになりやすい。 Newham の 1988 年の報告では、痛みは運動後およそ 8 時間は感じられず、1〜2 日後に最大になるとされる。だから運動中や直後は元気でも、翌々日にいちばんつらい、ということが起きる。何らかの筋の損傷が関わると考えられているが、痛みそのものの仕組みは完全には解明されていない。慣れない動作ほど強く出る、という点は覚えておくと気が楽だ。効果には個人差がある。

二度目が楽になるのは気のせい?

同じ運動を一度こなすと、二度目は損傷も痛みも小さくなると報告されている。 これは「繰り返し効果」と呼ばれる。Nosaka と Clarkson の 1995 年の研究では、前腕の最大エキセントリック運動を数週間あけて 2 回行うと、筋力低下・痛み・血中の指標のいずれも 2 回目のほうが有意に小さかった。McHugh の 2003 年のレビューは、この適応が神経・力学・細胞レベルで起きると整理している。つまり最初の一回がいちばんつらく、体は同じ刺激に静かに慣れていく。だからこそ、初回は張り切りすぎないほうがいい。

ストレッチで防げる?

運動前後のストレッチは、筋肉痛を意味のある程度には減らさなかったと報告されている。 無作為化試験をまとめたコクランの系統的レビューでは、ストレッチによる翌日の痛みの低下は平均で 100 点満点のおよそ 1 点にとどまった。ストレッチが無意味という話ではないが、「筋肉痛を防ぐための万能薬」ではないということだ。痛みを消す近道を探すより、慣らし方のほうに目を向けたい。

今夜の一手: 初回は「物足りない」くらいで止める

久しぶりの運動や新しい種目を始める日は、あえて控えめで終える。繰り返し効果があるぶん、二度目・三度目は同じ量でも楽になっていく。初回に追い込んで数日動けなくなるより、物足りないくらいで切り上げて続けるほうが、取り戻した気力を運動につなげやすい。強い痛みや腫れが続くときは、我慢せず医療機関に相談してほしい。効果には個人差があります。