トレーニングやランのあと、律儀にストレッチをする人は多い。「クールダウンをサボると明日つらい」と教わったからだ。でも、疲れているとつい飛ばしてしまい、そのたびに罪悪感が残る。あのストレッチは、本当に必要なのか。研究の範囲で正直に確かめたい。
クールダウンは筋肉痛を防ぐのか?
運動前後のストレッチは、翌日の筋肉痛をほとんど減らさなかったと報告されている。 無作為化研究をまとめたCochraneのレビュー(Herbert 2011)では、ストレッチによる翌日の痛みの低下は平均で100点満点のおよそ1点、1週間のピークでも約4点/100とごく小さかった。つまり「クールダウンのストレッチで明日の筋肉痛が消える」という期待は、根拠が薄い。サボったから痛くなる、というわけでもない。
そもそも筋肉痛は「乳酸」ではない
遅発性の筋肉痛は、乳酸ではなく伸張性の収縮による筋の一時的な損傷と関連づけられている。 レビュー(Cheung 2003)によれば、慣れない運動や、筋を伸ばしながら力を出す動き(坂を下る、重りを下ろす局面など)の24〜72時間後に痛みが出やすい。ここが誤解の多いところで、乳酸は運動後わりと早く片づく代謝物であって、翌々日まで残る痛みの犯人ではない。だから「乳酸を流すためのクールダウン」という説明は、そもそもの前提が外れている。
では、クールダウンは無意味なのか?
そうとも言い切れない。6〜10分ほどの軽い動きは、血中乳酸の除去を速め、その後の調子をやや助ける傾向が報告されている。 アクティブリカバリーのレビュー(Ortiz 2019)は、軽い運動がその後のパフォーマンスに肯定的な傾向を示す一方、最適な強度は不明で全体のエビデンスは弱い、と正直に述べている。乳酸の除去が速いこと自体(Devlin 2014)は確かでも、それが翌日の筋肉痛を防ぐわけではない。効果には個人差がある。要するに、クールダウンは「痛み止め」ではなく「切り替え」として意味がある。
あなたはどうすればいい?
条件で分けたい。筋肉痛を防ぐ目的なら、長いストレッチにこだわる必要はない。 慣れない運動を少しずつ増やして体を慣らすほうが、痛みは軽くなりやすい。一方、運動から日常へ気持ちよく戻りたいなら、数分の軽い歩きや深い呼吸を足すとよい。義務ではなく、心地よい範囲で。やらない日があっても、自分を責めなくていい。
今夜の一手: 「最後の3分を、歩きに変える」
次の運動の締めは、完璧なストレッチルーティンでなくていい。最後の3分だけ、その場でゆっくり歩いて呼吸を整える。それで「終わった」という区切りがつき、次回のハードルも下がる。筋肉痛が出ても、それは体が新しい刺激に慣れていく途中のサインで、数日で和らぐのが普通だ。痛みが強く長引くときは無理をしないこと。効果には個人差があります。