記録が伸びない。追い込んでいるのに、むしろ数字が落ちてきた。休むと後退する気がして、負荷を下げるのが怖い。深夜に前回のメモを見返しながら、もう一段重くすべきか迷う。でも、上げ続けることだけが前進なのか。漸進的過負荷という言葉の中身と、負荷をかけ続けた先で起こりうることを、一次情報から正直に並べてみたい。

そもそも、伸ばし続けるには何が要るのか?

適応を続けるには、体にかかる負荷を段階的に高める漸進的過負荷が要ると報告されている。 Ratamess らが2009年にまとめたACSMのポジションスタンドは、負荷・回数・頻度・種目を計画的に少しずつ変えることが、頭打ちを避ける鍵だとする。ここで見落としがちなのは「計画的に変える」の中身だ。それは一本調子で重くし続けることではない。回復を挟みながら積むことであり、ときに負荷を一段下げる調整も、計画の一部になりうる。

負荷を落とさず押し続けると、何が起こるのか?

負荷をかけ続けて回復が追いつかないと、オーバーリーチングからオーバートレーニングへ連続的に傾きうる。 Meeusen らが2013年にまとめたECSS/ACSMの合意声明は、機能的オーバーリーチング(短期の低下から回復後に向上)、非機能的オーバーリーチング(数週から数ヶ月の停滞)、オーバートレーニング症候群という連続体を整理している。中核は、説明のつかない持続的なパフォーマンス低下と長引く疲労だ。やっかいなのは、妥当な生物指標がなく、他の原因を除外したうえで後方視的にしか判断できない点で、対象も主に競技者だ。つまり明確な線引きはない。だからこそ、崖の手前で引き返す設計が要る。

では、落とす週はどう位置づけるのか?

負荷を落とす週は後退ではなく、次に積み上げるための立て直しの時間だ。 極端に運動量を増やし続けることが一般に良いとは言いにくい。Eijsvogels らの2018年の総説は、非常に高い運動量と一部の心臓の指標にU字型の関連がありうると慎重に提案する。ただし対象は生涯にわたる極端な持久系競技者で、一般人にそのまま当てはまるものではない。だから過剰への警戒は方向性として受け取りつつ、日々の設計としては、伸び悩みや疲労の蓄積が見えたときに負荷を一段下げる週を先に置いておく。数値の目安を当社が新しく作ることはしない。手がかりは記録の停滞と、抜けない疲れだ。

今夜の一手: 次の予定に、負荷を落とす週を先に書き込む

カレンダーを開いて、これから積み上げる数週間の先に、負荷を一段下げる週を一つだけ書き込む。予定に組み込んでおくと、軽くすることが後退ではなく設計になる。停滞や長引く疲れが出たら、それは押し切る合図ではなく、立て直す合図だと受け取る。異変が続くなら、生活習慣だけで抱えず医療機関に相談を。効果には個人差があります。