短い時間で息が上がるまで追い込むHIIT。効率がいいと聞くほど、毎日でも回したくなる。休むと後退する気がして、つい連日で続けてしまう。でも、毎日全力を出すことは、本当に近道なのか。原典の研究が示した条件と、負荷をかけ続けた先で起こりうることを、正直に並べてみたい。

原典のタバタは、そもそも何をやったのか?

原典のタバタは、最大酸素摂取量の約170%という全力の高強度で追い込む運動だった。 Tabata らが1996年に報告した研究では、若年男性が自転車エルゴメータで、その強度で20秒全力+10秒休息を7〜8セット(合計約4分)、6週間・週5日続けた。すると最大酸素摂取量と、無酸素性能力を示す最大酸素借の両方が向上したという。ここで正直に言っておきたいのは、これはsupramaximalと呼ばれる全力の条件で、市販の「タバタ式」とは強度や様式が異なりうる点だ。名前が同じでも、中身は別物になりうる。

続けて伸ばすには、何が要るのか?

適応を続けるには、段階的に負荷を高める漸進的過負荷が必要だと報告されている。 Ratamess らが2009年にまとめたACSMのポジションスタンドは、負荷・回数・頻度・種目を計画的に少しずつ変えることが、頭打ちを避ける鍵だとする。ただ、これは「毎日全力を出す」こととは違う。漸進とは、回復を挟みながら少しずつ負荷を積むことであって、休みなく追い込み続けることではない。伸びしろは、追い込んだ後に体が立て直す時間のなかで形になる。

毎日追い込むと、何が起こりうるのか?

負荷をかけ続けて回復が追いつかないと、オーバーリーチングからオーバートレーニングへ連続的に傾きうる。 Meeusen らが2013年にまとめたECSS/ACSMの合意声明は、機能的オーバーリーチング→非機能的オーバーリーチング→オーバートレーニング症候群(OTS)という連続体を整理している。中核は、説明のつかない持続的なパフォーマンス低下と長引く疲労だ。やっかいなのは、妥当な生物指標がなく、他の原因を除外したうえで後方視的にしか判断できない点で、しかも対象は主に競技者だ。つまり明確な診断の線引きはない。だからこそ、崖の手前で引き返す設計が要る。

では、頻度はどう設計するのか?

「毎日全力」より、追い込む日と回復する日を分けて配置するほうが誠実だ。 全力の日を週のうち数回に絞り、あいだに軽い日や休む日を挟む。強度を上げたい時期は、回数や頻度を一度に増やさず、片方ずつ少しずつ動かす。説明のつかない疲れやパフォーマンスの低下が続くなら、それは押し切る合図ではなく、休む合図だと受け取る。負荷への反応には個人差があり、同じメニューでも立て直しにかかる時間は人それぞれだ。

今夜の一手: 今週の予定に、休む日を1日書き込む

今週のカレンダーを開いて、追い込む日と並べて、休む日を1日だけ先に書き込む。予定に組み込んでおくと、休むことが後退ではなく設計の一部になる。全力は、立て直す時間があって初めて積み上がる。体を痛める前に休むことは、サボりではない。異変が続くなら、生活習慣だけで抱えず医療機関に相談を。負荷への反応には個人差があります。