はじめは軽かった重さが、いつのまにか楽に感じるようになる。けれど同じメニューを続けていると、ある時期から手応えが鈍っていく。なぜ、同じことを続けるだけでは変化が止まるのか。運動生理学の「漸進性過負荷」という考え方を手がかりに、その理由を整理していく。

白い円盤が少しずつ高く積み重なり階段を作る静物画像

なぜ、同じ運動を続けると頭打ちになるのか?

体は同じ負荷に慣れると適応が止まるため、変化を続けるには負荷を段階的に高める必要がある。

ACSMのポジションスタンド(Ratamess et al. 2009)は、健康な成人の運動処方についてまとめた文書だ。そこでは、体はかかる負荷に応じて適応するが、同じ刺激を繰り返すだけでは、いずれ変化が頭打ちになると整理されている。さらに適応を引き出すには、体にかかる負荷を計画的に少しずつ高めていく——これが漸進性過負荷の考え方だ。言い換えれば、頭打ちは失敗ではなく、体が慣れたという適応のサインでもある。個人差がある。

初心者は、どのくらいから始めればいいのか?

未経験者の目安は1RMの60〜70%で8〜12回、週2〜3日で、45〜60%程度でも最大筋力は向上しうる。

ポジションスタンドでは、初心者向けの具体的な目安が示されている。1RM(1回だけ挙げられる最大重量)の60〜70%の負荷で8〜12回、週2〜3日の頻度だ。さらに、未経験者では45〜60%程度の軽めの負荷でも最大筋力は向上しうるとされる。つまり、最初から重い負荷に挑む必要はない。軽い負荷から始めて、慣れたぶんだけ少しずつ上げていくほうが理にかなっている。効果には個人差がある。

「少しずつ」とは、何を増やすことなのか?

増やす対象は重さだけでなく、回数・頻度・種目なども含まれる。

漸進性過負荷というと重さを足すことばかり想像しがちだが、それだけではない。同じ重さでも回数を増やす、週の頻度を1日増やす、種目を足す——負荷の高め方は複数ある。大事なのは、急に大きく変えるのではなく、計画的に一つずつ少しだけ変えることだ。体調や年齢、経験によって適切な進め方は変わるし、痛みや違和感があるときは無理をせず中止してほしい。効果には個人差がある。

今夜の一手: 次に増やす「一つ」を、先に決めておく

やる気を一気に上げる必要はない。次のトレーニングで増やすものを、重さ・回数・頻度のどれか一つだけ、今のうちに決めておく。すべてを同時に変えないのが、頭打ちを穏やかに越えるコツだ。痛みや違和感があるときは中止して専門家へ。効果には個人差があります。