朝、目が覚めてすぐの一杯。あるいは「起床から90分は待て」という話をどこかで読んで、我慢している人もいる。どちらが正しいのか。体感でも流行でもなく、研究がどこまで言えているかだけで採点してみる。

朝、時計を見ながらコーヒーに手を伸ばす人のイラスト

採点基準を先に開示する

この決定戦の物差しは1つだけ——その時間帯を直接調べた対照試験があるかどうかだ。

「飲むと調子がいい気がする」は採点しない。体感は本物でも、期待や習慣と切り分けられないからだ。理屈の美しさも採点しない。もっともらしい機序の説明と、実際に比べて確かめた試験は別物だ。だから以下は「気持ちよさの順位」ではなく「研究の裏づけの順位」になる。効果には個人差があります。

第1ラウンド: 起床90分後は本当に有利か

土台の生理現象は実在する。ただし「ずらすと良い」を確かめた試験は見当たらなかった。

90分説の根拠としてよく挙がるのが、コルチゾール覚醒反応(CAR)だ。専門家のコンセンサスガイドライン(Stalder 2016)は、CARを起床後の最初の30〜45分にコルチゾール分泌が顕著に増える現象として記述している。ここまでは確かな話だ。

問題はその先だ。この文書はCARという現象の測り方を定めたものであって、「その時間を避けてカフェインを摂ると調子が上がる」ことを検証したものではない。今回照合できた範囲では、摂取時刻をずらした群と、すぐ飲んだ群を比べた対照試験は見つからなかった。

さらに理屈のほうも揺らぐ。Lovallo 1996(N=47・二重盲検プラセボ対照)では、カフェイン3.3mg/kg——コーヒー2〜3杯ほど——を摂ると、コルチゾールは60〜120分に上昇し、60分時点で最大約30%増だったと報告されている。つまりカフェインは「高いコルチゾールに邪魔される」というより、自分でも上げる方向に働く。「コルチゾールが高い時間を避ける」という説明は、この報告とうまく噛み合わない。

判定は、根拠が薄い。否定されたわけではなく、確かめられていない。

第2ラウンド: 朝イチと昼、どちらに研究がついているか

朝イチを禁じる根拠もない。そして最も確かなのは、実は夜側の話だった。

カフェインが注意や覚醒を後押しすること自体は、繰り返し報告されている。Guest 2021(国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド)は、カフェインが注意・覚醒といった認知機能に有効だと報告し、あわせて反応の個人差が遺伝的な変異や代謝、習慣的な摂取量に起因しうると述べている。朝イチを避けるべきだという記述は見当たらない。

一方で、時間帯の話としてはっきり数字が出ているのは夜側だ。Drake 2013(N=12)では、400mgのカフェインを就寝6時間前に摂った場合でも、客観的に測った総睡眠時間が1時間以上減ったと報告されている。しかも被験者はその乱れに気づいていなかった。朝の30分をどう動かすかより、午後の一杯を何時に置くかのほうが、測定された影響は大きい。

判定: 「最強の時刻」は一つに決まらない

エンタメとしての優勝は昼——ただし「昼が効く」ではなく「昼以降が効いてしまう」という意味で。

条件付きで書くと、こうなる。

  • 朝の眠気が強いなら、朝イチでいい。待つべきだという根拠は今のところ薄い。
  • 90分待つのが習慣として心地よいなら、続けても問題はない。ただし効果を期待する根拠は確立していない。
  • 午後に飲むなら、就寝時刻から逆算する。ここだけは数字のある話だ。

今夜の一手: 朝ではなく「夜の門限」を1つ決める

今日いじるのは、朝の時刻ではない。

  1. 就寝したい時刻を思い浮かべ、そこから6時間さかのぼった時刻を門限にする(約10秒)
  2. その時刻以降の飲み物を1つ決めておく(麦茶・カフェインレスなど・決めるだけ)

朝の一杯をいつ飲むかは、好みで決めていい。研究が背中を押しているのは、夜に残さないほうだ。取り戻したいのは冴えた朝で、そのための材料は前の晩の眠りにある。