寝不足の朝、まず手が伸びるのはコーヒーだ。一杯飲めば頭も冴え、なんとか乗り切れる気がする。だがカフェインは、失った睡眠そのものを取り戻しているのだろうか。

コーヒーカップの奥で黒い枕を白い曲面が覆う静物画像

寝不足の日、カフェインは何を支えてくれるのか?

カフェインは覚醒や注意、運動成績を一時的に支えると報告されている。

スポーツ栄養学の専門家団体によるポジションスタンド(Guest et al., 2021)は、体重1kgあたり3〜6mgのカフェイン摂取が運動成績に有効で、注意や覚醒といった認知機能にも有効だとまとめている。眠気を押し戻し、動ける状態をつくる働きは、研究でも支持されているようだ。ただし同じレビューは、反応の個人差が遺伝的な体質やカフェインの代謝速度、ふだんの摂取量によって生まれうるとも指摘している。効果には個人差があるという前提を外すと、この話は成立しない。

では、寝不足そのものは取り戻せているのか?

カフェインは眠気を覆い隠しているだけで、失った睡眠そのものを埋め合わせているわけではなさそうだ。

ある実験(Drake et al., 2013)では、400mgのカフェインを就寝6時間前に摂った場合でも、客観的に測った総睡眠時間が1時間以上減ったと報告されている。しかも被験者はその睡眠の乱れを自覚していなかった。「よく眠れた」と思っていても、眠りの量そのものは静かに削られていた、ということになる。

さらに別の実験(Lovallo et al., 1996)では、コーヒー2〜3杯に相当する量のカフェインを摂ると、ストレスホルモンであるコルチゾールが60〜120分の間に上昇し、60分の時点で最大約3割高くなったと報告されている。覚醒を後押しする一方で、体には負荷もかかっているらしい。

食品安全委員会のファクトシートも、カフェインの摂取量には目安があり、感受性には個人差があると説明している。つまり寝不足の翌日に一杯で乗り切っても、その一杯が今夜の眠りをまた削り、翌朝また同じ一杯に頼る、という循環になりうる。効果には個人差がある。

今夜の一手: 新しいカフェインは、就寝6時間前で区切る

今日変えるのは時間帯だけでいい。

  1. 就寝時刻の6時間前を「最後の一杯」の目安にする(例: 23時に寝るなら17時以降は控える・約10秒)
  2. その日の疲れは、カフェインではなく早めの就寝で返す(予定を1つ前倒しするだけ)

寝不足を一杯で完全に帳消しにはできないようだ。だが飲む時間を少し早めるだけで、今夜の眠りを削らずに、今日の乗り切りとうまく付き合える可能性はある。