大会前の夜、スマホで「ビーツ 持久力」と検索して、赤いジュースが目に入る。飲めばタイムが縮む、と紹介する声は多い。けれど、その効果はどのくらいで、どんな場面に当てはまるのかは見えにくい。約80件の研究をまとめたメタ分析を手がかりに、範囲と限界を整理していく。

ビートルートは、持久力に何をすると報告されているのか?
約80件の研究をまとめたメタ分析では、運動パフォーマンスを全体としてわずかに高めたと報告されている。
食用硝酸塩(ビートルートやビーツジュースに多く含まれる)の補給を調べたメタ分析では、プラセボと比べて運動パフォーマンスが全体としてわずかに向上したと報告されている。ただし、その効果量は標準化平均差でおよそ0.17と「小さい」水準だ。体内で硝酸塩が一酸化窒素に変わり、血流や筋肉の酸素の使われ方に働くと説明されるが、数字の上での上乗せは控えめだった。効果には個人差がある。
その効果は、どんな場面に限られるのか?
疲労困憊までの持続時間や40分未満のタイムトライアルなど、条件が限られていた。
メタ分析が示したのは、いつでもどこでも高まるわけではない、ということだ。効果が比較的みられやすかったのは、疲れ果てるまで運動を続けられる時間(time to exhaustion)や、40分未満の短めのタイムトライアル、高強度運動での速筋線維の働きなど、限られた場面だった。よく鍛えられた選手ほど、もともと体の巡りが良いためか上乗せが出にくいという報告もある。つまり「持久系の一部の場面で、小さな後押しになりうる」くらいの温度で受け取るのが正直だろう。
試すとしたら、どんな姿勢がいいのか?
研究で使われた量を、本番でなく練習で試す。合わなければやめる、を前提にする。
研究で用いられたのは、硝酸塩でおよそ5〜16mmol(ビートルートジュースで摂取)を、運動の2〜3時間前に一度、または数日間続ける形だった。だから試すなら、この飲み方を大事な本番でいきなり試すのではなく、まず練習で体との相性を見るのが現実的だ。ビーツは尿や便が赤くなることがあり、胃腸が合わない人もいる。サプリやジュースは、積み上げてきた練習の「代わり」ではなく、条件が合う日の小さな一手として置くほうが、期待に振り回されずにすむ。効果には個人差がある。
今夜の一手: 「効く前提」を外して、まず一回だけ試す日を決める
今夜ビーツジュースを買うかどうかは、決めなくていい。決めるのは、もし試すなら「本番ではない練習日」を一日えらぶこと。その日に体の感じや相性だけを見て、合うかどうかを自分で確かめる。サプリは答えの一部にはなっても、練習の全部にはならない。効果には個人差があります。
