深夜、冷蔵庫のゼロカロリー飲料に手が伸びる。「これは太らない」はずが、「かえって食欲が増える」という話も聞く。どちらが本当なのか。甘味料と食欲の話は、研究の種類によって結論が食い違う。だからこそ、どちらかに寄せず、食い違いそのものを見たほうがいい。

試験では、食欲や食事量は増えるのか?

無作為化試験をまとめた研究では、砂糖を低カロリー甘味料に置き換えても、その後の食事量は増えなかったと報告されている。

Rogers らが 2016 年に Int J Obes 誌へ報告した系統的レビューによれば、短期の介入試験で砂糖を低カロリー甘味料に置き換えると、その後の総摂取エネルギーはむしろ約 94kcal 低かった(95%CI −122〜−66)。水と比べた場合は −2kcal で、実質差はなかった。4 週以上続けた試験では、砂糖比で体重が 1.35kg、水比で 1.24kg 低いという結果も出ている。

少なくとも試験の世界では、「甘味料が食欲を増やして食べ過ぎさせる」という像は支持されていない。

では、なぜ「太る」という話が出るのか?

長期の観察研究では、甘味料を多く使う人ほど体重が重いという関連も報告されている。ただし逆の因果が疑われる。

Toews らが 2019 年に BMJ 誌へ報告した系統的レビューでは、観察研究で摂取量の多い群の体重や BMI が高い関連が示された。一方で著者らは、全体として便益も害も確証する質の高い証拠は乏しいとも整理している。

ここで大事なのは因果の向きだ。観察研究では、「もともと体重が気になる人がダイエット目的で甘味料を選ぶ」という逆の流れが混ざりやすい。甘味料が体重を増やしたのか、体重を気にする人が甘味料を選んだのか——観察データだけでは切り分けられない。だから「増やす」とも断定できない。

試験は中立〜わずかに減る方向、観察は体重増と関連。この食い違いこそが、今の正直な結論だ。効果には個人差がある。

今夜の一手: 甘味料より「全体のリズム」を見る

甘味料の是非で消耗する前に、視点を一段引く。①置き換えるなら砂糖入り飲料の代わりに、を基本にする。②我慢を積み増すより、食事と睡眠のリズムを整える。③体型や食べ方が強く気になるときは、一人で抱えず専門家に相談する。甘味料は道具の一つにすぎない。取り戻した心の余裕を、極端な我慢ではなく整ったリズムに使うほうが続く。