夜、手が勝手にスマホへ伸びる。あるいは、閉じたはずの戸棚のお菓子が頭から離れない。「我慢しなきゃ」と力を込めるほど、その衝動は大きくなっていく気がする。闘えば闘うほど疲れて、結局は負ける。そんな夜が、繰り返される。
衝動は、抑え込むほど強くなる?
強さを消そうとするより、来て引くのを眺めるほうが、行動に移さずにすむと報告されています。 Bowen & Marlatt 2009(喫煙者123名のRCT)は、渇望を敵として抑え込むのではなく、波のように高まってやがて引いていくのを観察する「アージサーフィン」を簡単に教えました。結果は示唆に富みます。渇望そのものの強さは、教わった群と対照群で差がありませんでした。ところが、その後7日間の喫煙本数は、アージサーフィンを教わった群で有意に少なかったのです。つまりこの技術は、渇望を消す魔法ではなく、渇望への「反応」を変えるものだと考えられます。ただし研究の蓄積はまだ限定的で、この一本で結論とはいえません。
どうやって「波に乗る」のか?
衝動を観察の対象に変えるのが要点です。 やることは単純です。渇望が来たら、それを打ち消そうとせず、体のどこにどんな感覚が起きているかに注意を向ける。胸のあたりがざわつくのか、口が寂しいのか、指先が落ち着かないのか。そのうえで、感覚が高まって、山を越え、やがて引いていくのを、岸から波を見るように眺める。多くの渇望は数分で山を越えるとされ、その数分をやり過ごせれば、手が動く前に一呼吸おけます。うまく乗れない日があっても、それは失敗ではありません。波は次も来るので、また眺めればいい。合わないと感じたら、無理に続けなくて構いません。
今夜の一手: 次の衝動を「3分、眺める」
衝動と闘う代わりに、今夜は一度だけ観察してみる。スマホやお菓子に手が伸びそうになったら、動く前に「いま、波が来た」と心の中で名づけ、感覚がどう変わるかを3分だけ眺める。引いていったら、それで十分。「Bowen 2009・渇望は消えなくても行動は減った」と一行メモしておけば、我慢比べから降りて、波をやり過ごす側に立てる。
