やめようと決めた夜ほど、吸いたい・見たい・食べたいという気持ちが強くなる。我慢しようと力むほど、その衝動が頭を占めていく。こういうとき、体を動かすことは助けになるのか。喫煙の渇望を扱った研究のレビューを手がかりに、正直なところを見ていく。

短い運動は、渇望を弱めると報告されているのか?
一時的に喫煙を我慢している人では、5〜30分の運動で渇望と離脱感が軽くなったと報告されている。
Roberts ら(2012)は、喫煙の渇望に対する運動の効果を調べた複数の研究をまとめて分析した。対象は、一時的にタバコを我慢している喫煙者だ。そこで見られたのは、5〜30分程度の短い運動を1回行うと、何もせず座っているだけの条件と比べて、タバコへの渇望と離脱症状が軽くなるという傾向だった。衝動が完全に消えるわけではないが、和らぐ方向に動いた、という報告だ。
この結果を、どこまで広げてよいのか?
対象は喫煙の渇望で、スマホなど他の衝動一般に当てはまるとまでは示されていない。
ここは正直でいたい。このレビューが扱ったのは、あくまで喫煙の渇望だ。スマホを見たい、甘いものが欲しい、といった他の衝動にも同じ効果があるとは、この研究からは言えない。また、最も効く運動の強度や、なぜ効くのかの仕組みも、まだはっきりしていない。だから「動けば確実に衝動が収まる」ではなく、「体を動かして間を作る、という手が試す価値をもつ」くらいの温度で受け取るのが誠実だ。反応には個人差がある。
衝動が来たとき、どう使えばいいのか?
消すためではなく、間を作るために体を使う。無理のない強度でいい。
考え方はシンプルだ。衝動が来た瞬間に、その場で立ち上がって伸びをする、少し歩く、階段を上り下りする。渇望と行動の間に、体を動かす数分をはさむ。その数分が、勢いのピークをやり過ごす「間」になる。息が上がるほど追い込む必要はなく、できる範囲で構わない。取り戻したいのは、衝動に即座に反応しない自分のペースだ。持病があるときは運動内容を医療機関へ相談してほしい。反応には個人差がある。
今夜の一手: 衝動が来たら、まず10秒だけ立ち上がる
衝動をねじ伏せようとしなくていい。決めるのは、次に強い「欲しい」が来たとき、まず10秒だけ椅子から立ち上がってみること。それで消えなくても、勢いに一拍の間ができる。体を動かすのは、我慢の道具ではなく、間を作る道具だ。つらさが続くときは無理をせず専門家へ。反応には個人差があります。
