眠れない夜、スマホで「寝る前 ストレッチ」と検索すると、たくさんの方法が出てくる。体をほぐせば眠りが深くなる——そう聞くと、試したくなる。けれど、それはどこまで研究で確かめられているのだろう。16件の研究をまとめたレビューを手がかりに、範囲と限界を整理していく。

ストレッチは、睡眠に何をすると報告されているのか?
継続的なストレッチと睡眠の質を調べた研究では、改善の傾向はみられたと報告されている。
Alimoradi ら(2024)は、睡眠に困りごとを抱える人を対象に、継続的なストレッチ運動と睡眠の質の関係を調べた16件の研究を集めて整理した。そこでは、睡眠の質の改善が「ごくわずか」から「非常に大きい」まで幅広く、全体としては改善の傾向がみられたと報告されている。寝つくまでの時間や睡眠の効率が良くなったと報告する研究もあった。体をほぐすことが、寝る前の緊張をゆるめる方向に働きうる、という読み方ができる。効果には個人差がある。
その結果を、どこまで信じてよいのか?
有意な改善を報告したのは16件中5件にとどまり、まだ予備的な段階と整理されている。
ここで立ち止まりたいのは、傾向と確かさは別だということだ。このレビューで、統計的に意味のある改善を報告したのは16件のうち5件にとどまった。効果の大きさも、測り方も、研究によってばらついていた。つまり「ストレッチは睡眠に効く」と結論づけるには、まだ研究が足りない段階だ。だから「やれば確実に眠れる」ではなく、「試す余地はある」くらいの温度で受け取るのが正直だろう。
試すとしたら、どんな姿勢がいいのか?
呼吸が乱れない範囲で、気持ちのいいところまで。痛みを我慢しないことを前提にする。
レビューが扱ったのは激しい運動ではなく、ゆっくりとしたストレッチだった。寝る直前に息が上がるような強い運動をすると、かえって目が冴える人もいる。だから始めるなら、呼吸が乱れない範囲で、気持ちのいいところまで体をのばす程度でいい。痛みを我慢して伸ばす必要はないし、痛みや持病がある方は医療機関に相談してほしい。ストレッチは、眠りを保証する道具ではなく、寝る前に体と気持ちを一段ゆるめる小さな習慣として捉えるほうが、期待に振り回されずにすむ。効果には個人差がある。
今夜の一手: 眠る前に、ひとつの部位だけをゆるめる
今夜すぐに長いストレッチを始めなくていい。決めるのは、寝る前に「一番こっている部位」をひとつだけ選び、そこを30秒だけゆっくりのばすこと。効いたかどうかは、数日眺めてから判断すればいい。体をほぐすことは、眠りへの答えの一部にはなっても、全部にはならない。効果には個人差があります。