「食物繊維が腹持ちにいい」とよく聞く。だから繊維の粉をふりかけたり、レジスタントスターチを狙って冷やごはんを選んだりする。その工夫は、どこまで理にかなっているのか。夜、台所で小さなスプーン一杯の繊維を眺めながら、これを足せば満腹感は本当に上がるのか、と静かに考える。根拠のあるところと、まだ言えないところを、正直に分けてみたい。

繊維を「足せば」満腹感は上がる?

単離・抽出した食物繊維をサプリ的に足しても、満腹感やその後の摂取量は明確には変わらなかったと報告されている。 健康な成人の無作為化試験をまとめたシステマティックレビュー+メタ分析では、水溶性食物繊維を補給しても、大半の試験でその後の食事のエネルギー摂取や主観的な満腹感がプラセボと比べてはっきり変わらなかった。繊維は多いほど満腹、という単純な足し算にはなりにくい。粉で量を足すという発想そのものを、いったん保留したくなる結果だ。

では、何が満腹感を分けるのか?

同じカロリーでも、加工度の低い丸ごとの食品ほど満腹感が高い傾向が示唆される。 Holt らが 1995 年に報告した満腹感指数では、同じ 240kcal で 38 食品を比べ、白パンを基準の 100 とすると、ゆでジャガイモが 323 で最も満腹感が高く、クロワッサンは 47 で最も低かった。いも類のように、水分と組織を丸ごと抱えた食品は、少ないカロリーでよく満たす。ただし各群 11〜13 人・120 分測定の小さな研究であり、これだけで結論を急ぐことはできない。

食べ方の工夫では動かないのか?

食べる回数を増やすといった工夫だけでは、満腹感は改善しなかったと報告されている。 FRESH 研究というランダム化クロスオーバー試験では、1 日 3 食と 1 日 6 食を各 21 日間入れ替えて比べたが、空腹感・食欲・満腹感の自己申告は高頻度でも改善しなかった。回数をどう割るかという小手先の工夫より、何をどんな形で食べるかのほうが、満腹感を左右しているように見える。繊維を粉で足す・回数を刻む、といった操作は、思うほど効かないのかもしれない。

レジスタントスターチ単体は、腹持ちを保証する?

言い切れない、というのが誠実な答えだ。 レジスタントスターチだけを取り出して腹持ちを直接測った数値は、我々の手元の根拠にはない。だからここまでの話は、満腹感研究一般からの外挿にとどまる。単離繊維は明確に効かなかった、しかし丸ごとの食品は満たしやすい——この二つをつなぐと、繊維を粉で足すより、いも類や冷やごはんを丸ごとの形で食べるほうが理にかなう、という整理になる。あくまで整理であって、保証ではない。効き方や感じ方には個人差がある。

今夜の一手: 粉で足すより、丸ごとで選ぶ

今夜の一皿を、繊維の粉を足すことより、丸ごとの形を選ぶことで考えてみる。いつものごはんに、ゆでたじゃがいもや冷ましたごはんを、無理のない量で添える。食事を減らすためではない。いつもの食事を、少ないカロリーで気持ちよく満たすための選び方だ。合わなければ元に戻せばいい。食事や体重の悩みが続くときは、一人で抱えず医療機関や専門家に相談を。感じ方には個人差があります。