握力が健康の目安になる、という話を目にして、机の引き出しのハンドグリップを手に取る。毎日握れば鍛えられるのか。それとも、やりすぎは逆効果なのか。健康との関わりも含めて、研究の範囲で正直に確かめたい。

握力は健康と関係あるのか?

握力の低さは、死亡や心血管疾患と逆相関すると報告されている。 17カ国13万人超を追った前向きコホート(Leong 2015)では、握力が5kg低いごとに全死因死亡のリスク指標が上がり、握力は収縮期血圧より死亡の予測力が高かったとされる。ただしこれは観察研究だ。握力そのものより、全身の筋力や健康状態を映す「窓」として低さが目立つ、と読むのが正確で、鍛えれば寿命が延びる因果までは示せない。効果には個人差がある。

だから毎日鍛えたほうがいい?

そうとは限らない。筋力は回復を挟んで伸びる。 ACSMのポジションスタンド(Ratamess 2009)は、筋力を伸ばすには負荷を段階的に高める漸進性が要るとし、初心者の頻度目安を週2〜3日としている。同じ部位を毎日最大限に握り続ける運用は想定されていない。前腕の筋力を鍛えるにも、休みを入れたほうが理にかなう。痛みや違和感が続くなら、それは休むサインだ。

わざわざ器具がいる?

いつも要るとは限らない。日常や全身運動の中でも育つ。 重い買い物袋を持つ、鉄棒にぶら下がる、懸垂やデッドリフトのような大きな種目を行う——こうした動作でも前腕は使われる。器具を毎日握ることに固執するより、生活の中で握る場面を増やすほうが続けやすい。握力はあくまで指標の一つで、そこだけを追い込むより、体全体を無理なく動かす延長で捉えるのが穏やかだ。

今夜の一手: 「毎日でなく、週に数回、無理なく」

もし握力を意識するなら、毎日追い込むより週に2〜3回、痛みの出ない範囲で握る日を作ろう。あるいは買い物袋を片手で持つ、ぶら下がる、といった日常の一場面を足すだけでもいい。握力は数字を競うものではなく、体の元気をそっと映す窓だ。今夜は器具を置いて、まず休んでいい。効果には個人差があります。