スマホを置いて運動を始めた夜、ふと迷う。「渇く前にたくさん飲め」と聞いたこともあれば、「飲みすぎは危ない」と聞いたこともある。検索すると、真逆のアドバイスが同じ強さで並んでいる。この記事はどれか一つを正解に祭り上げない。代わりに、水分の摂り方を仕組みで3つに分け、それぞれの限界を正直に書く。
この記事がやらないこと
「1回◯mlを◯分おきに」といった一律の補給量は出さない。 適量は運動強度・気温・体格・発汗の個人差で大きく変わるからだ。当サイトはドリンクやサプリの紹介料を受け取っていないので、特定の商品や数値を推す理由もない。扱うのは考え方の違いだけで、どの戦略にも合う場面と合わない場面がある。効果には個人差がある。
3つの戦略、それぞれの限界
先回り型: 渇く前から多めに飲んでおく。 長所は脱水への備え。限界は、運動中に飲みすぎる方向へ振れやすいことだ。EAHの国際コンセンサス(2015年)は、運動関連低ナトリウム血症の主因を脱水そのものではなく運動中の過剰な水分摂取だと整理し、一律の大量飲水を推奨していない。「多いほど安全」は成り立たない。

渇き応答型: 喉の渇きを手がかりに飲む。 同じコンセンサスが基本に据えているのがこの考え方だ。長所は、体のサインに合わせられること。限界は、高温や長時間の運動では渇きが遅れて出る場面もあり、それだけに頼りきれないことだ。
電解質追加型: 水にナトリウムなどを足す。 Baker 2017は、発汗速度も汗のナトリウム濃度も個人差が大きく、万人共通の補給量を一つの数値で示すことはできないと整理している。しかも日本人はもともと食塩摂取が高めだと厚労省も解説している。長所は長時間・多量発汗の場面での備え。限界は、日常や短時間の運動では足す必要が乏しいことが多い点だ。
あなたはどれから始める?
場面から逆算する。 30分程度の運動や日常の範囲なら、渇き応答型で足りることが多い。夏場や1時間を超える運動、汗を大量にかく人は、渇き応答を土台にしつつ電解質追加型を場面限定で重ねる。逆に「安全のため」と先回りで大量に飲む癖があるなら、まずそれをゆるめるほうが理にかなっている。持病がある人や医師の指示がある人は、そちらを最優先にしてほしい。
今夜の一手: 次の運動の「長さ」を先に決めておく
補給量より先に、次に運動する時間の長さを一つ決める。30分以内なら渇きを手がかりに水で足りる、と最初に決めておくだけでいい。長くなる日だけ、電解質を足すか考える。迷いが減れば、飲みすぎにも飲まなさすぎにも振れにくくなる。

