深夜、スクリーンタイムの数字を見て息が詰まる。また3時間。「そもそも1日何分までなら大丈夫なんだろう」と検索したことはないだろうか。先に正直に言う。その質問に、研究はまだ答えられない。

「1日◯分まで」という安全ラインはある?
万人共通の安全ラインを示した研究は、今のところない。
SNSと幸福感の関係を調べた研究は数多くあるが、結果は一致していない。使用時間と幸福感の関連は、メタ分析の間でも結論が割れている。「◯分を超えると危険」と断言する記事を見かけたら、それは研究が示せる範囲を超えた主張だ。
年齢や使い方(眺めるだけか、人とやり取りするか)、睡眠にどれだけ食い込むかで影響は変わると考えられており、一律の分数で線を引けないのが実情だ。
参考になる数字は何もない?
「制限すると何が起きたか」を測った実験ならある。
143人を対象にした実験(Hunt 2018、単一研究)では、SNSを1日10分/プラットフォームまでに制限した群で、孤独感と抑うつ感の低下が報告された。
ただし読み方に注意がいる。これは「10分なら安全」という意味ではない。単一の実験であり、幸福感全体への効果はメタ分析で結果が割れている。言えるのは「大きく減らしたとき、気分の面で良い変化が報告された例がある」まで。ここが研究の示せる範囲と示せない範囲の境界線だ。
分数が決められないなら、何を決めればいい?
上限ではなく「削る枠」を決める。
619人の無作為化比較試験(Brailovskaia 2022)では、スマホを完全に断つより「1日1時間だけ減らす」群のほうが、4ヶ月後も1日約45分の使用減が持続し、生活満足度や身体活動の増加も報告された。
「何分まで」という上限は、守れたかの判定が難しい。そして超えた瞬間に「今日ももうダメだ」が始まる。「昨日より1時間減らす」なら達成を測れて、失敗しても翌日やり直せる。分数の正解を探し続けるより、削り方を決めるほうが現実的じゃない?
今夜の一手: 「削る枠」を1つ決める
- スクリーンタイムで、一番時間が溶けているSNSを1つ特定する(約1分)
- 「明日はそのアプリを1時間分減らす」と決める。ゼロは誓わない
- 減らした時間の行き先を1つ決めておく(風呂・本・ストレッチ、何でもいい)
安全ラインは誰にも示せない。でも、今夜のあなたが決められる枠は1つある。それで十分だ。


