深夜0時40分。動画の合間にふと思う。「ジムに通えば、こんな夜はなくなるんじゃないか」。運動で夜スマホを上書きする作戦。それを実際に確かめた実験がある。

深夜に運動を思い描く人のイラスト

運動すればスマホ時間は減る?

運動単独より、スマホ使用を減らすこと自体のほうが有効だった、という報告がある。

ドイツで行われた実験(Brailovskaia 2023、N=503)は、参加者を4つの群に分けた。

  1. スマホ使用を1日60分減らす群
  2. 身体活動を1日30分増やす群
  3. その両方をやる併用群
  4. 何もしない統制群

結果、スマホ関連の指標に効いたのは「減らす」と決めた群だった。運動だけを増やした群は、削減群ほどの効果を示さなかったと報告されている。「体を動かせばスマホは勝手に手から離れる」という置き換え仮説は、このデータでは支持されなかった。

考えてみれば筋は通っている。ジムの1時間がどれだけ充実しても、深夜の布団にスマホがあれば、そこは別の戦場だ。運動は夜スマホの引き金に触れていない。

じゃあ、運動は無駄だった?

無駄ではない。併用群では、減らし始めの渇望が和らいだと報告されている。

同じ実験の併用群——減らしながら運動もした人たち——では、削減の初期に出やすい「見たさ」の渇望が緩和されたという。そして効果は介入後3ヶ月の時点でも持続したと報告されている。

つまり運動の役どころは、主役ではなく補助輪だ。減らすと決めた直後のいちばんぐらつく時期を、転ばずに走り抜ける支えになる。補助輪だけ買っても自転車は進まないけど、乗り始めの数週間には、あればずっと楽になる。そういう位置づけだ。

運動や心理的介入を検討した系統的レビュー(Liu 2022・23件のRCT)でも、運動はスマホの問題的使用の低減に寄与しうる補助として位置づけられている。「万能ではないが、脇に置くには惜しい」。それが現在のデータの姿だ。

今夜からどう組み合わせる?

主は「減らす設計」、従は「軽い運動」。順番を守るだけでいい。

ジム契約から始める必要はない。主役は減らす設計だから、まずスマホまでの手間を増やす。運動は、渇望が来た時の逃げ道として軽く仕込んでおく。むずむずした時に10回のスクワットをする、くらいで補助輪の役は果たせる。

今夜の一手: 主役と補助輪を1つずつ

今夜は2つ。合計1分。

  1. 主役: 一番時間が溶けるアプリを、フォルダの2階層奥へ移す(約30秒)
  2. 補助輪: 「見たくなったら、その場でスクワット10回」と決めておく(決めるだけ・0秒)

運動はあなたを救う魔法ではない。でも、転びかけた夜を支える補助輪にはなる。主役の座は、今夜の30秒の配置換えに譲ろう。