眠れない夜、部屋の明るさを疑ったことはあるだろうか。ドアの隙間から漏れる光、充電中のランプ、枕元でぼんやり光るスマホ。「暗くすれば眠れる」とよく言われるが、どこまで本当なのか。研究の範囲で、正直に確かめたい。

暗さは、そんなに大事なのか?

夜の光は体内時計を遅らせる、と公的にも解説されている。 厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、朝の強い光が体内時計を前に進め、夜の光はそれを遅らせる。体内時計が後ろにずれれば、寝つく時刻も遅くなりやすい。だから就寝前の光環境を整えること、つまり寝室を暗めにすることには、生理学的な筋が通っている。ここは、暗くする発想の土台だ。

「光る端末」が寝室にあると?

端末が『そばにあるだけ』でも、睡眠不足や質の低下と関連したと報告されている。 子ども・若者を対象にした17件の横断研究のメタ分析(Carter 2016)では、就寝時に端末を使わず手元に置いているだけでも、睡眠不足のオッズ比が1.79、質の低下や日中の眠気の増加と関連した。別の横断調査(Fuller 2017)でも、寝室に携帯電話がある子はおよそ1時間睡眠が短かった。ここで正直に言うべき限界がある。これらは横断研究で、因果は示せない。眠れない人ほど端末を手元に置く、という逆向きの説明も否定できない。それでも、光と通知を同時に持ち込む端末が、眠りの妨げになりうる点は見過ごせない。

ブルーライトカットでは足りない?

波長だけを狙う対策の効果は、一貫していない。 ブルーライトカット眼鏡を調べた17件のRCTのレビュー(Singh 2023)では、睡眠への効果は試験間でばらばらで(改善3件・差なし3件)、結論は不確定だった。これが示すのは、問題が「青い光の波長」だけに還元できないということだ。眠りを妨げているのは、光の色というより、光そのものと、そこにくっついてくる刺激(通知・スクロール・考えごと)なのだろう。だから対策も、色を削るより、光と刺激をまとめて減らすほうが理にかなう。効果には個人差がある。

あなたはどうすればいい?

条件で分けたい。手軽に効かせたいなら、遮光カーテンを買う前に、光る端末を寝室の外で充電する。 これは光源と刺激源を同時に減らせて、費用もかからない。それでも明かりが気になるなら、ドアの隙間や機器のランプを一つずつ潰す。 真っ暗が落ち着かない人は、弱い常夜灯で構わない。暗さは眠りの土台の一つであって、唯一のスイッチではない。就寝時刻やカフェインなど、他の要因も一緒に見ていきたい。

今夜の一手: 「充電器を、寝室の外に一つ移す」

今夜、スマホの充電器を寝室の外(廊下やリビング)に一つ移してみよう。枕元から光る端末が消えるだけで、光と通知の両方が遠ざかる。それでも眠れない夜が続くなら、暗さ以外の要因も見直すサインだ。長引く不眠は、我慢せず医療機関に相談してほしい。効果には個人差がある。