「毎日同じ時刻に寝て起きるといい」とよく言われる。それで律儀に就寝時刻を守ろうとして、眠くないのに布団に入り、天井を見つめて焦る——そんな経験はないだろうか。時刻をそろえることは、本当に眠りを変えるのか。研究の範囲で、正直に確かめたい。
時刻をそろえると、何が起きる?
体内時計は毎日リセットが必要で、その手がかりが光だ。 厚生労働省の解説によれば、朝の強い光が体内時計を前に進め、夜の光は遅らせる。体内時計はきっちり24時間ではなく、毎日わずかにずれるため、外からの手がかりで合わせ直している。つまり「時刻をそろえる」ことの正体は、時計に毎日同じ合図を送り続けることだ。ここが、規則性が効く仕組みの土台になる。
効くのは「就寝」より「起床」かもしれない
時計のアンカーになりやすいのは、就寝時刻より、起床時刻と朝の光だ。 夜、眠くないのに就寝時刻を守ろうとしても、眠気そのものは意思では出せない。むしろ布団の中で焦り、眠りが遠のくこともある。一方、起きる時刻は自分で決められる。決まった時刻に起きて朝の光を浴びれば、体内時計に強い合図が入り、その日の夜の眠気も後からついてきやすい。だから順序としては、寝る時刻を追いかけるより、起きる時刻を固定するほうが手をつけやすい。
直接の証拠は、どこまで?
正直に線を引いておきたい。「就寝時刻だけをそろえると眠りが良くなる」ことを直接調べた確かな証拠は、我々が照合した範囲では限られる。 言えるのは、体内時計が光と起床のリズムで整えられること(公的解説)と、就寝前に一定の手順を置くと眠りが改善したという小規模で予備的な報告があること(He 2020・就寝前30分のスマホ制限)くらいだ。だから「毎日同じ時刻に寝れば決まって眠れる」と断定はできない。確かめられていることと、まだ確かめられていないことを、混ぜないでおきたい。
あなたはどうすればいい?
条件で分けたい。規則を作るなら、まず起床時刻を一つ決めて固定する。 平日も休日も、大きくはずらさない。起きたらカーテンを開けて光を浴びる。就寝時刻は「その時刻の少し前に眠くなる」のを待つくらいでよい。 眠くないのに早く布団に入る必要はない。休日の寝坊は1〜2時間までにとどめると、平日とのずれが小さく保てる。完璧な時刻表より、大きくぶれないことのほうが続く。
今夜の一手: 「明日の起床時刻を一つだけ決める」
今夜決めるのは、寝る時刻ではなく、明日起きる時刻だ。一つだけ決めて、起きたらすぐカーテンを開ける。夜の眠気は、その朝の光から後で戻ってくる。何日か続けても眠れない状態が変わらないなら、時刻以外の要因を見直すサインだ。長引く不眠は我慢せず、医療機関に相談してほしい。


