夜、なかなか寝つけない日が続くと、一杯のお酒に頼りたくなる。実際、飲めばすっと眠りに落ちる。けれど、決まって夜中の3時ごろに目が覚めて、そのあとは浅い眠りをさまよう。「よく眠れた」感じはしないのに、寝つきだけはいい。この矛盾は、どこから来るのだろう。

お酒を飲むと、本当に寝つきはよくなる?

寝つき自体はよくなると報告されています。 Ebrahim 2013(健常者を対象としたレビュー)は、アルコールがすべての用量で入眠潜時(布団に入ってから眠るまでの時間)を短くし、前半の睡眠を安定させると整理しています。つまり「飲むと早く眠れる」という実感は、気のせいではありません。問題は、その効果が夜通し続かないことです。血中のアルコール濃度が下がってくる後半になると、今度は睡眠の乱れがむしろ増える。寝つきの良さと、夜全体の質は、切り離して考える必要があります。なお、この分野には方法論への反論(Pressman & Orr 2015)もあり、細部を断定はできません。

後半の睡眠は、どう変わる?

分断され、質が下がると整理されています。 Colrain 2014(レビュー)は、就寝前の多量飲酒が、血中濃度の高い前半では入眠を助ける一方、後半には分断された質の低い睡眠をもたらすと報告しています。加えて、心の整理や記憶の定着に関わるとされるREM睡眠が用量依存で減ることも、複数のレビューで一致した指摘です。飲んだ量が多いほど、後半の乱れは目立ちやすくなります。「夜中に目が覚めて眠りが浅い」というあの感覚は、まさにこの後半の乱れと重なります。寝酒は眠りの入り口を早めても、夜全体の質を底上げするわけではない——それがこれらの研究が示す姿です。

今夜の一手: 「寝つき」と「質」を分けて眺める

寝酒をやめるかどうかの前に、まず切り分けてみる。今夜は飲んだ量と、翌朝の「寝た気がするか」をひとことメモする。数日続けると、寝つきの良さと目覚めのすっきりさが、いつも一致するわけではないと気づくはずだ。「Ebrahim 2013・前半は安定、後半は乱れる」と添えておけば、寝つきの良さを質の良さと取り違えずにすむ。眠りの悩みが続くときは、医療者に相談してほしい。