夜、トレーニングを終えてスマホを開くと「運動前に飲むべき」「この30分を逃すな」の広告が並ぶ。焦らせる言葉ほど、何を根拠にしているのかは書いていない。運動前の食事は、そんなに繊細なタイミング勝負なのか。一度、研究の側から順番を整理してみる。

運動後にスマホでサプリ広告を見る夜の場面のイラスト

運動前後の「魔法のタイミング」はある?

結論から言えば、タイミングそのものより1日の総量のほうが主役だと報告されている。

Schoenfeld, Aragon & Krieger 2013は、筋肥大23研究・筋力20研究をまとめたメタ分析で、1日の総たんぱく質摂取量を統計的にそろえて比べると、トレーニング前後の摂取タイミングによる差は消えたと報告している。「直前・直後に入れたかどうか」より「1日で足りていたか」が効いていた、という読みだ。

いわゆる「ゴールデンタイム(同化ウィンドウ)」についても、Aragon & Schoenfeld 2013のレビューは、その重要性や存在自体が条件次第で、従来は過大評価されてきたと論じている。運動直後の数十分に何かを詰め込めなくても、それで台無しになるわけではない。

では運動前は何を食べればいい?

特別な一品ではなく、1日の中で足りるように食べればいい、というのが研究の立場だ。

Jäger et al. 2017のISSNポジションスタンドは、運動する人の多くにとって1日のたんぱく質量は1.4〜2.0g/kg体重で十分とし、1回あたりは0.25g/kgまたは20〜40gを目安に挙げている。同化効果は運動後24時間以上続くとされるため、摂取の最適タイミングは本人の許容度しだい、とまとめている。

つまり運動前の食事は、「消化に重すぎず、空腹すぎない」状態を作れる範囲で、いつもの食事に必要量を含めれば足りる。粉末や特定の商品が必須という話ではない。効果には個人差があります。

空腹と満腹、どちらで動くのがいい?

そこは研究の数値より、自分の消化の快適さで決めていい部分だ。

タイミングの差が小さいなら、運動前に無理をして食べる理由も、意地で抜く理由も薄い。空腹だと力が入りにくい人もいれば、直前に食べると胃が重くて動けない人もいる。ここは万人共通の正解がなく、消化の許容度の個人差そのものだ。

大事なのは、広告の「今すぐ・これを」に急かされて、続かない習慣を背負わないこと。1日を通して足りていれば、運動前の一口は気楽に選んでいい。

今夜の一手: 明日の運動前の一口を「軽く決めておく」

  1. **明日の運動前に食べるものを、消化が重くならない範囲で1つだけ決めておく。**おにぎり半分でも、ヨーグルトでもいい(約20秒)
  2. 余力があれば、1日でたんぱく質がだいたい足りているかをざっくり見返す。

運動前の食事は、繊細なタイミング勝負ではなく、1日の積み上げの一部だ。取り戻した気力を、続けやすい一口から土台づくりに向ければいい。