明かりを消した瞬間に、同じ考えが巡り始める。昼間のやりとり、明日の段取り、言えなかった一言。考えるのをやめようとするほど、はっきり戻ってくる。時計を見て、また眠れない自分に焦る。でも、巡る考えは意志で止められるものなのか。止めようとする以外に、置き場を決めるという手はないのか。一次情報から、静かに考えてみたい。

「考えるな」と念じれば止まるのか?

意志で抑え込むより、あらかじめ行動を決めておくほうが実行に移りやすいと報告されている。 Gollwitzer と Sheeran が2006年にまとめたメタ分析では、if-then型の実行意図、つまり「Xの状況になったらYをする」と前もって結びつけておく計画が、目標達成と中程度の効果量で関連した。ただし正直に言えば、強い衝動の下では単独では効きにくく、環境の設計との併用が前提ともされる。だから「考えるな」と念じるのではなく、「巡り始めたら、その一行をメモに移す」と先に決めておく。考えを消すのではなく、置き場を用意する発想だ。

手元のスマホは、何をしているのか?

就寝前30分スマホを手放した群で、入眠までの時間や就寝前の覚醒が改善したという小規模な報告がある。 He らが2020年に行った38人の予備試験では、寝る前の30分間スマートフォンを使わないよう指示された群で、寝つくまでの時間が短くなり、睡眠の質が上がり、就寝前の覚醒が下がったという。小規模な試験なので、断つこと自体を強く勧める段階ではない。ただ、画面を見ていると、手放したい考えがさらに新しい刺激で上書きされていく。考えの受け皿を作る前に、まず刺激の入り口を一定時間だけ閉じておく、という順番は理にかなう。

では、今夜は何を先に決めておくのか?

巡り始めたときの一手を、眠る前に一つだけ決めておく。 たとえば「同じ考えが二周したら、枕元のメモに一行だけ書いて、朝に回す」。書くのは解決策ではなく、考えそのものを外へ移すためだ。頭の中で回し続けると終わらないものも、紙に一行置くと、いったん手放せることがある。うまくいかない夜もある。それでも自分を責めなくていい。設計は、失敗しても翌朝また置き直せる。

今夜の一手: 枕元にメモを一枚、置いてから寝る

眠る前に、枕元にメモとペンを一つ置く。そして「考えが二周したら一行書いて朝に回す」と、声に出さずとも一度決めておく。考えを止める力ではなく、逃がす経路を先に用意しておく。それでも眠れない夜が続き、日中に支障が出るなら、自分だけで抱えず医療機関や相談窓口へ。眠れなさは、弱さの証明ではない。効果には個人差があります。