夜、寝る前に「今日はもうスマホを見ない」と決める。なのに気づけば手が伸びている。意志が弱いのだろうか。おそらく、決め方の設計がもう一段いる。我慢ではなく、あらかじめ行動を決めておく——その研究と、夜に使える具体例を並べてみる。

就寝時に枕元のスマホへ手を伸ばす人のイラスト

「気をつけよう」はなぜ効きにくいのか

その場の判断に任せるほど、疲れた夜の脳には不利になる。

「見ないように気をつけよう」は、その瞬間の意志に判断をゆだねている。だが夜は一日の判断を使い切ったあとで、いちばん踏ん張りが利かない時間だ。そこで手渡すのが、前もって状況と行動を紐づけておく「もし〜なら」の設計だ。

Gollwitzer & Sheeran 2006のメタ分析(94の検定)は、「この状況になったらこう動く」と具体的に決めておく方法(実行意図)が、目標の達成に中程度の効果(d=0.65)を示したと報告している。その場で考えるのではなく、考える作業を前倒ししておく、という発想だ。

夜に使える「もし〜なら」の作り方

きっかけ(もし)と、代わりの一手(なら)を、具体的な形でセットにする。

抽象的な決意ではなく、引き金になる場面を名指しするのがコツだ。例えば——

  • もしベッドに入ったら、なら スマホは枕元でなく部屋の反対側の充電器に置く
  • もし「あと1本だけ」と思ったら、なら 立ち上がって水を一杯飲む
  • もし通知の音が鳴ったら、なら 画面を伏せて明日の朝に確認すると声に出す

ポイントは、我慢する内容ではなく、代わりにやる行動を決めておくことだ。「見ない」より「代わりにこうする」のほうが、その場の脳に優しい。

決めごとだけでは足りない、もう一つの前提

強い衝動の下では、環境を変えることとの併用が前提になる。

ここは正直に書いておく。同じGollwitzer & Sheeran 2006は、強い衝動がかかっている場面では「もし〜なら」だけでは効きにくく、環境設計との併用が前提だと述べている。

つまり、手を伸ばせばスマホが届く枕元で「見ない」と決めても分が悪い。決めごとは、環境側の一手——別の部屋で充電する、通知を絞る——と組み合わさって初めて働きやすくなる。意志の力を鍛える話ではなく、意志に頼らずに済む配置をつくる話だ。

守れない夜があっても振り出しには戻らない

1回のつまずきでは、積み上げは実質的に壊れない。

決めたのに守れない夜もある。そこで「やっぱり自分はダメだ」と全部を投げないでほしい。Lally 2010(N=96)は、行動が自動化するまでに中央値で66日、人によっては18日から254日までの幅があること、そして1回スキップした程度では習慣形成が実質的に壊れないことを報告している。

1日の失敗は、全体の失敗ではない。翌日また同じ「もし〜なら」に戻ればいい。続ける人は、失敗しない人ではなく、失敗を大ごとにしない人だ。効果には個人差があります。

今夜の一手: 「もし〜なら」を1つだけ紙に書く

今日つくるのは、立派な計画ではない。たった1行でいい。

  1. 夜いちばんスマホに手が伸びる場面を1つ思い浮かべる(約10秒)
  2. 「もし◯◯したら、なら△△する」の形で、代わりの一手を1つ書く(紙でもメモアプリでもいい)

決意を強くする必要はない。決める作業を、今夜のうちに済ませておくだけだ。取り戻したいのは強い意志ではなく、迷わずに済む段取りのほうだ。